2024年10月30日、東京・御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターで「ローカル5Gサミット 2024」が開催された。全セッション満席の盛況が続いたが、ひときわ人気を博していた1つが、エレクトロニクス商社の丸文による講演「ローカル5Gは2025年に普及期を迎えるのか?」だ。
矢野経済研究所によると、2023年度の国内ローカル5G市場は63億円。2030年度には558億円に到達する見込みだ。ただ、導入コストや運用の難しさなどがハードルとなり、期待通りに導入が進んでいるとは言い難い。
このような状況をベンダー各社はどのように捉えているのか。丸文は、マネージド型ローカル5Gサービス「ギガらく5G」を提供するNTT東日本と、IoTエンジニアリングサービスを手掛けるベイシスにインタビューを実施した。
NTT東日本でローカル5G事業を担当するワイヤレス&センシングビジネス推進室の山形祥貴氏は、「2025年以降は自動運転や設備運用の効率化など、産業を中心にローカル5Gの需要は高まっていく」としながらも、今後の市場発展にはさらなるコスト低廉化が重要だと強調した。
ベイシスで取締役兼執行役員を務める佐藤倫太氏は、「2025年は、まだPoC段階にある小規模事業者も少なくないだろう。完全な普及という意味では、もう少し先になるのでは」と予想した。
中国や台湾など、諸外国でもローカル5G(プライベート5G)の普及に向けた取り組みが加速しているが、丸文 アントレプレナ事業本部 イーリスカンパニー 情報通信課の小川竜平氏によると、ローカル5GとWi-Fiを併用する事例が増加傾向にあるという。
例えばある中国の企業は、工場内にローカル5GとWi-Fiのハイブリッド構成で自営網を構築している。高速性や信頼性が求められるロボット制御等にはローカル5G、低遅延性がそれほど必要とされないアプリケーションにはWi-Fiを利用するといった使い分けをしているという。
台湾のあるベンダーは、オールインワンのコア一体型のローカル5GシステムとWi-Fiアクセスポイント(AP)を車1台に搭載した、災害対策向け「車載型システム」を開発した。ローカル5Gを用いることで、ドローンで撮影した被災地の高精細映像を災害対策本部へリアルタイム伝送できる。Wi-Fiは避難所の通信環境整備などに用いているとのことだ。
欧州の港湾でも、設備のレイアウト変更等に柔軟に対応するため、「有線+Wi-Fi」から「ローカル5G+Wi-Fi」へと徐々にシフトしてきているという。「国内ではローカル5GとWi-Fiの“二者択一”になることが多いが、両者の共存を検討していくことも、ローカル5G普及の後押しとなるのではないか」と小川氏は展望した。