「宇宙で発電、地球や月へ」 NTTが目指すレーザー光でワイヤレス電力伝送

「面積当たりの年間発電量は、地上の約10倍」

宇宙空間で太陽光によって発電した電力を地上へ送る「宇宙太陽光発電」。その優位性についてこう話すのは、NTT 宇宙環境エネルギー研究所 環境負荷ゼロ研究プロジェクト 次世代エネルギー技術グループ グループリーダ・主幹研究員 髙橋円氏だ。質の高い太陽光を豊富に利用できることから、地上よりはるかに大きな電力を得られる。

NTT 宇宙環境エネルギー研究所 環境負荷ゼロ研究プロジェクト 次世代エネルギー技術グループ グループリーダ・主幹研究員 髙橋円氏

NTT 宇宙環境エネルギー研究所 環境負荷ゼロ研究プロジェクト 次世代エネルギー技術グループ
グループリーダ・主幹研究員 髙橋円氏

太陽光発電は、地上では大気による吸収・散乱や天候の影響が避けられない。宇宙空間にはそれらがなく、良質な太陽光を使ってほぼ24時間365日ぶっ続けで発電できる。

脱炭素目標の達成やエネルギー安全保障の重要性が高まる中、宇宙太陽光発電への注目は世界中で高まっている。北米と欧州では政府の支援の下、NASAや欧州宇宙機関等で技術開発・実証が進展。日本も例外でなく、政府のエネルギー基本計画において次世代クリーンエネルギーの1つとして位置づけられている。

電波でなく光で届ける

開発競争における焦点の1つが、送電方法だ。

静止軌道上で太陽光発電したエネルギーを伝送する手段として代表的なのが「マイクロ波」と「レーザー光」である。どちらも一長一短があり、マイクロ波は天候への耐性が高く安定性に優れるが、大規模な装置が必要な点がマイナスだ。ビームの広がりを抑えるため、大型のアンテナ・受信装置が欠かせない。また、地上や衛星の通信システムとの干渉リスクもある。

一方、レーザー光は指向性が高く、装置の小型化が可能だが、天候の影響を受けやすく安全面での注意も必要だ。誤射防止システムが不可欠になる。

NTTが着目するのは、後者だ。「小型化が期待できるレーザー方式の実用化に向けて、3つの技術開発に取り組んでいる」(髙橋氏)

1つめが「太陽光励起レーザー技術」。装置・システムを小型化、シンプル化するのが狙いだ。

従来技術では、太陽光から得た電力を光に変換してレーザー発振というプロセスを経るが、この電力変換を介さず、太陽光をレーザー光に直接変換することで、変換時の発熱低減とシステムの小型・軽量化が期待できるという。

2つめは「長距離エネルギー伝送技術」だ。宇宙太陽光発電は衛星や月への送電も想定されているが、地上へレーザー光を届ける場合には、大気の揺らぎの影響を受ける。位置がずれたり、ビームが広がったり分散したりすると地上での電力への変換効率が落ちてしまう。

この克服こそ、光技術に長けたNTTの腕の見せ所だ。「ビームが不均一だと変換ロスが多くなってしまうので、(地上の)受光パネルに均一な光が届くよう整形して送るフラットビーム成型技術を開発した」(髙橋氏)。2025年2月の実証実験で、1kWのレーザー光を1km先に伝送し、世界一高効率な15%の光無線給電に成功。「30分にわたる連続給電も実現した。大気の揺らぎが大きな昼間の地表でこれだけ安定した電力を得たのは、世界でも前例がない」

最後の「高強度レーザーエネルギー変換技術」は、レーザー受光時のエネルギー損失を低減するものだ。特定のレーザー波長に特化したコンバーターを開発し、1cm角の高電変換素子で42%の電力変換効率を達成した。これも、宇宙長距離レーザー給電で想定される高出力密度条件において世界トップクラスの性能だ。

こうした技術開発に加えて、宇宙太陽光発電の実用化には、発電・送電機器等の輸送コストの低減が欠かせない。SpaceXが2026年にも軌道飛行試験を実施する次世代スターシップのような革新的な輸送インフラが実現すれば、「コストが大幅に下がり、原発や火力発電よりも安価な電力源になるとする予測もある」(同氏)。

宇宙太陽光発電のイメージと主要技術

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