強みのミリ波技術で6G開発に貢献 1THz対応受信器もラインナップに

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2030年代に実現が見込まれる6G通信では、100GHzを超える新たなミリ波帯域であるサブテラヘルツ(サブTHz)帯域の活用が期待されている。一般的に30GHzから300GHzの電波をミリ波と呼ぶが、通信ネットワークの世界では100GHzから300GHzの周波数帯をサブTHzと呼んで区別することが多い。無線通信のさらなる高速化に向けてこれらの高周波の活用が望まれている。

一方で、サブTHz帯域では電波の減衰が大きく、直進性の高さなど扱いが難しいことから「使いこなせるのか」という不安も大きい。

しかし、「工場などの屋内環境、屋外でも両側にビルが立ち並ぶ通りなどでは、反射波によって実用的な通信が可能になるのではないか」

独ローデ・シュワルツでテクノロジーマネージャーを務めるタロー・アイヒャー氏は、昨年夏にミュンヘンの本社ビルで実施した無線伝搬実験の結果を踏まえて、新たなミリ波帯域の可能性に期待をかける。

 

ローデ・シュワルツ テクノロジーマネージャー タロー・アイヒャー氏
ローデ・シュワルツ テクノロジーマネージャー タロー・アイヒャー氏

サブTHzの研究をリード 6Gでの活用に向けて貢献無線通信向け測定器を主力とするローデ・シュワルツは自ら、新たな周波数帯の実用化に向けた研究・開発に取り組むことで、市場をリードしてきた。同社はITU-Rや3GPPなどの国際標準化団体のワーキンググループ(WG)などにも参加し、ミリ波帯域やテラヘルツ波帯域など高周波帯での電波特性を明らかにして業界に貢献している。

ローデ・シュワルツでは2021年、6Gの標準化に向けた基礎データの収集を目的に、欧州最大の通信分野の研究機関、フラウンホーファーハインリッヒヘルツ研究所(HHI)、ベルリン工科大学と共同で実施した。実験では、ローデ・シュワルツの本社・研究棟の吹き抜け空間でHHIが開発した送信モジュールを用いて158GHz/300GHzの電波を送出。吹き抜け空間内の様々な場所でローデ・シュワルツの受信装置により15度ステップで全方向わたって測定、壁や天井などでの反射を含む伝搬状況を解析する形で行われた。さらにはビル外での伝搬状況の測定も行われたが、結果として300GHzでも最大170m離れた場所で測定が可能であったという。

 

ドイツ・ミュンヘンのローデ・シュワルツ本社で行った158GHzおよび300GHzの電波による伝送実験の様子
ドイツ・ミュンヘンのローデ・シュワルツ本社で行った158GHzおよび300GHzの電波による伝送実験の様子

W. Keusgen, A. Schultze, M. Peter and T. Eichler, “Sub-THz Channel Measurements at 158 GHz and 300 GHz in a Street Canyon Environment,“ submitted to 2022 Joint European Conference on Networks and Communications & 6G Summit (EuCNC/6G Summit), Grenoble, 2022.  https://arxiv.org/abs/2203.04404

見通し通信では障害物の影響を受けやすいミリ波だが、工場などのインドア環境では反射波によりかなり実用的に使えるとされている。今回の実験でサブTHz帯でも同様の特性が得られる可能性が見えてきたのだ。「サブTHz帯では、ほとんど研究されてこなかった反射波の状況を明らかにするのが実験の大きな狙いでした」(アイヒャー氏)というが、その目的が果たされたと言えよう。

「現在、無線業界では2027年の世界無線通信会議(WRC-27)で、6G向けの周波数帯の世界的な割り当てを決めようという動きがあります。そのためには、WRC-27の前に開催される、2023年のWRC-23までにこの帯域を本当に使えるということを証明しないといけません」とアイヒャー氏は言う。ローデ・シュワルツでは、6Gでの早期利用を実現すべく、サブTHz帯の利用技術の研究・開発にさらに力を入れていく考えだ。

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