楽天シンフォニーが日本市場にも攻勢 “メイドインジャパン”の仮想化基盤とOSSを武器に

6月号ビジネス最前線_楽天シンフォニー

楽天シンフォニー 執行役員 日本カントリーマネージャー 眞﨑浩一氏

——楽天シンフォニーの事業内容とビジネス状況について教えてください。

眞﨑 当社は、楽天モバイルが培ってきたモバイルネットワークの仮想化・ソフトウェア化に関するノウハウをグローバルへ外販することを目的に、2022年に設立されました。

楽天グループでは、2020年にOSS(Operation Support System)を手掛ける米Innoeye社、2021年にオープンRAN(O-RAN)ソフトウェアを開発する米Altiostar社、2022年には仮想化ソフトウェアを提供する米Robin社を買収していますが、こうした企業を束ねるのも楽天シンフォニーです。

例えばInnoeye社のOSSソリューションは、米AT&Tや豪Boost Mobile、ノキアなどでも採用されています。こうした各社が持つ顧客基盤を引き継ぎ、現在の顧客数は74社、パートナー企業は17社にのぼります。

買収による事業ポートフォリオの拡充に伴い、売上収益や受注額も年々右肩上がりの成長を続けており、楽天シンフォニーは2025年度(1~12月)、創業以来初めてNon-GAAP営業利益の通期黒字化を達成しました。

図表 楽天シンフォニーが買収したグローバル企業

図表 楽天シンフォニーが買収したグローバル企業

——今年3月には、日本市場を開拓する新組織「楽天シンフォニー・ジャパン」が本格始動しました。グローバルを主戦場としてきた楽天シンフォニーが、日本市場に注力する理由は。

眞﨑 国内ではこれまで、最大ユーザーである楽天モバイル向けの対応を優先してきたこともあり、本格的な営業体制を整備できていませんでした。しかし今後は、我々がグローバル市場で培ってきた実績と知見を最大限に活かし、日本企業のDXを後押ししたいと考え、新たに日本市場を担当する組織を設立しました。

とはいえ、日本市場へいきなりO-RANで攻勢をかけるのは難しいので、買収したRobin社の仮想化ソフトウェアやInnoeye社のOSSの展開から着実に進めていきます。

仮想化基盤のリプレース狙う

——仮想化ソフトウェアのターゲット市場はどこですか。

眞﨑 エッジ用途での引き合いが増えています。限られたスペースとリソースの中で、複数の機能やアプリケーションを柔軟かつ安全に動かすための基盤として、エッジでも仮想化が不可欠になりつつあるからです。

特に小売業界でのニーズが顕著です。在庫・受発注・労務管理に加え、防犯・監視カメラの映像解析や電子棚札など、多様なアプリケーションを店舗で稼働させたいという要望が増えています。ただし、クラウドとの接続が途切れた際、これらがすべて停止してしまうとなると、BCPの観点で大きなリスクです。そのため、データをパブリッククラウドに集約しつつも、エッジ側で最低限の業務機能を自律的に維持できる構成が求められています。

エッジとAIの関係も重要です。例えば、製造業であれば産業用PCやPLC(シーケンサー)、小売業であれば在庫・受発注システムなどにAIが組み込まれていきます。そうなると、すべての処理をパブリッククラウドで行うのは、遅延の観点から現実的ではありません。そこで、リアルタイム性が求められる推論処理はエッジ側で処理し、高度な分析はクラウド側で行うといった役割分担が進んでいくと見ています。

——仮想化ソフトウェア大手のVMwareが米ブロードコムに買収されて以降、同社製品のライセンス体系が大きく変わり、ユーザーの負担が大幅に上昇するケースも出ています。

眞﨑 当社としては仮想化ソフトウェアのリプレース需要も見据えています。楽天シンフォニーが仮想化ソフトウェアの知的財産権を保有しているため、実質メイドインジャパンで提供でき、経済安全保障の観点からも意義があると思っています。また、価格決定権を自社で持てるため、柔軟な料金設定が可能です。他社との比較は差し控えますが、決して高くはない価格帯での提供を想定しています。

楽天モバイルでは、ベアメタルサーバー上に仮想化基盤を構築し、その基盤上で基地局機能やコアネットワークのソフトウェアを動かしています。この仮想化基盤は、どの処理をどのサーバーで動かすかを自動制御するオーケストレーション機能を備えており、高スループットや低遅延といった通信事業者特有の要件を満たすように最適化されています。

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