大阪大学D3センター、同大学産業科学研究所、NECは2026年8月21日、大容量の研究データを高速かつ安全に移送する次世代データ転送基盤「RED-ONION(Research EnhanceD Osaka university Next-generation Infrastructure for Open research and innovatioN)」を構築し、10月から試験運用を開始すると発表した。
研究活動では実験装置や計測機器の高度化に伴い、生命科学・医学分野などを中心に生成されるデータ量が増大している。こうした大規模な研究データをAIで解析し、科学研究を加速する「AI for Science」への期待が高まる一方、対象となる研究データにはゲノムや医療関連などの機微データも含まれる。
また、データを生成する実験設備と、AI処理やシミュレーション解析を担うスーパーコンピュータなどの高性能計算基盤は、必要な専門知識や設置環境が異なることから、大学・研究機関内外に地理的・組織的に分散している。このため、機微データを安全に扱いながら、大容量データを計算基盤へ迅速に移送して利用できる環境の整備が課題となっている。
RED-ONIONでは、大阪大学吹田キャンパス内の産業科学研究所とD3センターを100Gbps級の専用光ファイバーネットワークで接続する。産業科学研究所で生成したゲノムや医療関連などの機微データを学内データセンターに収容し、D3センターのスーパーコンピュータ「SQUID」「OCTOPUS」やクラウド基盤「mdxII」へ転送。AI処理やシミュレーション解析を行い、結果を研究現場へ返送できる。

一般的なデータ転送では、十分なネットワーク帯域を確保しても送受信するサーバー内のデータ処理が追いつかず、回線性能を使い切れない場合がある。RED-ONIONは、ネットワークとサーバー内のデータ処理を専用エンジンで一括制御し、複数処理を並列化することでディスク間転送を高速化する。これまでの検証から、100Gbps級の専用ネットワーク上で1TBの研究データを約90秒で転送できる見込みとしている。
まず、内閣府の「経済安全保障重要技術育成プログラム」に採択された「ナノギャップ生体分子シークエンサー」の研究などで活用し、今後は他部局や研究機関への拡張も視野に入れ、機微データを安全に移送・利活用できる研究基盤の実現を目指す。本格稼働の時期や対象とするデータ種別、接続する計算機資源、運用範囲については、10月からの試験運用の結果を踏まえて順次決定する予定という。
NECはRED-ONIONで培った技術を「NEC Ultra-high-speed Data Transfer System(NEC UDTS)」として確立しており、他の大学や研究機関への展開も視野に入れている。