
――2021年2月のSharing Design(SDI)設立から、5年が経とうとしています。これまでの成果を振り返ってください。
氏本 前任の木下(伸氏)が社長を務めた草創期は、株主である住友商事と東急の取引先を中心に基地局シェアリング設備を納入する建物・拠点数を積み上げていきました。2023年末に拠点数は約100に到達。私が社長に就任した2024年春以降は伸びが加速し、同年末に400拠点、2025年度末までに700拠点を超える計画です。
JTOWERさんが10年近く先行している市場ですが、草創期に住友商事・東急系の建物で技術・ノウハウを磨けたことは、私が受け継いだ大きな財産です。
そして、もう1つ重要だったのが、木下時代に受注した大型案件です。大阪・関西万博と、舞浜地区の大型エンターテイメント施設の基地局シェアリング構築を手掛けたことが、成長を牽引する要素となりました。
――大阪・関西万博では、終盤に来場者が膨れ上がる中でも通信サービスのトラブルは皆無でした。
氏本 4キャリアと連携して、4G/5Gの全周波数帯に対応するシェアリング設備を会場内に約30カ所設置し、来場者15万人をサポートできるよう設計しました。全キャリア・全バンドの基地局シェアリングでこれほど分厚いキャパシティを持つものは例がなく、世界最大級と自負しています。
まさに大成功だったのですが、実は初日だけトラブルがありました。慣れない保安検査により、東ゲートから夢洲駅まで数万人の来場者が滞留してしまった。このトラフィックは流石にさばけませんでしたが、その夜にキャリア各社が移動基地局を手配し、保安検査もスムース化したことで2日目以降は大きな滞留もなくなりました。
会期中は、つながりにくいと声が挙がったエリアを無線機の追加やリピーターでカバーするなどの対処も行いました。終盤は来場者が1日20万人まで増えましたが、トラブルなしで乗り切れました。

――技術力を磨くという意味でも、得られたものは大きかったのでは。
氏本 その通りです。例えば、メーカーと連携して“お化け”のような混合分配器を開発しました。
基地局シェアリングでは、各キャリアの無線機から出てくる周波数帯域(波長帯)をそのまま混合するとノイズが増えてしまうので、バンドパスフィルターで特定の信号以外をカットしたうえで混合しなければなりません。
ただ、全キャリア・全バンドなのでフィルタリングを何段も重ねる必要があります。当社のエンジニアがコンセプトをメーカーに伝えて共同開発した混合分配器は、まさに傑作と言えるものです。
終盤の混雑をノーミスで乗り越えたことで、各キャリアから信頼も得られ、絆が深まりました。
――今年度末の700拠点とは、SDIが基地局シェアリングを導入・運営する建物や施設の数ということですね。
氏本 その通りです。渋谷スクランブルスクエアやキャナルシティ博多などの商業施設、東急や大阪メトロ等の鉄道駅、仙台国際空港のほか、アリーナやスタジアムの導入例もあります。また、新橋SL広場のように屋外にも展開しており、不特定多数の人が集まる施設を中心に設置してきています。