「ドコモもKDDIも、ミリ波を何とか普及させたいという思いがある。そうした中、2024年に我々が開発したミリ波中継器の商用展開をきっかけに、ドコモにもこの中継器に興味を持っていただき、『両社でミリ波中継器を共用するための実証ができないか』という流れになった」
KDDI ネットワーク開発本部 アドバンスド技術推進部 部長の井上義隆氏は、京セラ・NTTドコモと「共用中継器」の共同開発に至った経緯について、こう説明する。

ミリ波中継器とは、ミリ波基地局からの電波を中継・増幅し、エリアカバレッジを広げる装置だ。KDDIが2024年に開発した中継器は、同社のミリ波(28GHz帯)基地局からの電波を中継するもので、2024年10月から昨年3月にかけて西新宿(都庁周辺)で実施した実証実験では、エリア内の道路カバー率を33%から99%へ拡大させることに成功した。
KDDI本社がある高輪ゲートウェイ駅周辺をはじめ、阪神甲子園球場等のスタジアム・球場、東京駅の東北・北陸新幹線ホームなど、すでに約30基の同中継器が商用展開されている。
今年5月に発表した京セラ製の「共用中継器」は、基本機能はそのまま、KDDI・ドコモ両社のミリ波基地局からの電波を1台で中継できるようにした(図表1)。先代モデルと同様で、次の3点の特徴を備えている。
図表1 共用中継器によるミリ波の中継イメージ

1つめが、自律的にミリ波エリアを形成できることだ。小型筐体に、多数のアンテナ素子で構成されたフェーズドアレイアンテナを搭載。ソフトウェア制御により、基地局からの電波を補足するドナーアンテナ(ドナー面)と、その電波を中継・増幅させるサービスアンテナ(サービス面)の機能を動的に切り替えられる。
中継器は360度全方向の電波状況を自律的に探索し、基地局から最も強い電波を受信したアンテナをドナー面、それ以外をサービス面に切り替える。これにより、効率的にミリ波エリアの構築・拡大が可能だ。
2つめが、中継ルートの最適化である。基地局や他の中継器から受信した電波の品質が低下すると、ドナー面をより高品質な電波を受信できるアンテナへ自動的に切り替える。また、ビルの建設や樹木の繁茂などによって中継ルートが遮蔽された場合でも、別のルートを自律的に計算・選択し、安定した通信を維持できるという。
3つめが、小型・軽量化である。本体サイズは縦216×横216×高さ246mm、重量は4.9kgで、ミリ波基地局と比べてサイズ・重量ともに7割程度削減。街灯などへの設置も容易だ。