ソフトバンクが見据える量子時代の新ビジネス「量子技術と企業の架け橋に」

「ソフトバンクが量子コンピューターを作ることはないし、新たな量子アルゴリズムを生み出すにもやや力不足。我々の顧客へのリーチャビリティを活かし、量子コンピューターのベンダーとユーザーとの間にある大きなギャップを埋める“ブリッジ”になる」

現在のコンピューターに比して圧倒的な計算能力を獲得する可能性がある量子コンピューター。この技術に、ソフトバンクはどう相対するのか。先端技術研究所 先端技術開発部 部長の小宮山陽夫氏はそう話す。

ソフトバンク 先端技術研究所 先端技術開発部 部長 小宮山陽夫氏

ソフトバンク 先端技術研究所 先端技術開発部 部長 小宮山陽夫氏

Quantinuumとの協業の狙い

量子コンピューターがその圧倒的な計算能力を活かせる領域は、新素材の開発や物流・交通の最適化、次世代AIの開発など多岐にわたる。

ただし、ユーザーが求めるのは計算手段(古典か量子か)ではない。計算結果がもたらす価値だ。企業が自らの課題に量子計算のパワーを適用できるか否かを判断し、結果を得るには、仲介者が不可欠。現在のGPU as a Serviceのような形での量子計算リソースの提供に加えて、「顧客企業の課題解決のためのコンサルティングがソフトバンクの役割となる」と小宮山氏は展望する。

図表 ソフトバンクの役割

図表 ソフトバンクの役割

まず取り組むのが、量子コンピューターベンダーとの協業だ。

ソフトバンクは現在、4社と共同研究を進めている。この1月には、米Quantinuumと量子コンピューターの事業化に向けた共同研究の開始を発表した。「量子データセンター」のビジネスモデル構築、具体的なユースケース確立などに取り組む。

量子ビット数やエラー率についてのロードマップを公表する量子コンピューターベンダーは少なくないが、ユーザー企業が本当に知りたいのは「量子コンピューターを使って、いつ何ができるようになるか」である。そこでQuantinuumとは、「ロードマップとユースケースの対応付け」から活動を開始する。ソフトバンクの顧客企業から解きたい課題を提示してもらい、「どんなアルゴリズムが適用できれば解決できるか、そのアルゴリズムを実現するのに必要なハードウェア/ソフトウェアなどを予測する」。

これにより、実用化タイミングの予測精度が高めるのが狙いだ。

Quantinuumとしても、顧客企業と直接つながる通信事業者と組むメリットは大きい。ハードウェアとアプリケーションができても、ユーザーがその計算結果に満足するかは未知数だからだ。ソフトバンクが予め課題と求める結果をインプットすることで、実用時の価値を見定められる。

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