ローカル5Gの利用シーンは、工場や農業、建設現場、医療など多岐にわたる。最近は、オフィスでの活用に向けた取り組みも見られる。
GMOインターネットは2020年9月、渋谷フクラスのグループ第2本社において、28GHz帯SA(スタンドアローン)構成のローカル5G予備免許を取得した。
16階にあるコミュニケーションスペース「シナジーカフェ GMO Yours」内にローカル5G環境を構築し、年内にも実証実験を開始する。
実証実験は渋谷フクラス16階のコミュニケーションスペース
「シナジーカフェ GMO Yours」で行われる
GMOインターネットがローカル5G活用で目指しているのが、自社サービスとの融合だ。
1995年の創業以来、一貫してインターネット関連事業を手掛けており、クラウドやセキュリティ、ホスティングといったインフラに加えて、広告・メディアや金融、暗号資産など多角的に事業を展開している。「既存サービスとローカル5Gを組み合わせることで、新たなビジネスの可能性を探っていきたい」と常務取締役 事業統括本部 アクセス事業本部長の林泰生氏は話す。
同社にはグループ全体で6000人超の従業員がいるが、その半数近くがエンジニアやクリエイターだ。また、創業時から、渋谷にオフィスを構えるエンジニアやクリエイターとの協業を通じて成長してきた経緯がある。「社内外のエンジニアやクリエイターがローカル5Gに直接触れられるテスト環境として、シナジーカフェ GMO Yoursを開放したい」(林氏)という。
導入の課題はコストと調整GMOインターネットがローカル5Gの検討を開始したのは、今年1月のこと。「そこからプロジェクトを立ち上げ、行動を始めるのは早かった」(林氏)というが、モバイル系インフラについては“門外漢”だけに、文字通り手探りの状態だった。
免許申請を担当した、システム本部インフラサービス開発部の割田太郎氏は「総務省への申請手続きは初見で判断が難しい点が多く、専門知識がなければ担当者との会話がかみ合わない。基地局を設置するにもどのような機器が必要で、どういうメーカーがあるのか、何も分からなかった」と振り返る。
そこで、以前から林氏と付き合いのあったNIerのレンジャーシステムズのサポートを受けながら、段取りを決めていった。
ローカル5Gへの参入にあたり「何事も経験」と前向きに捉えていたものの、最も面食らったのがコストだった。
「基地局やコアネットワークの採用メーカーにもよるが、現状はキャリアグレードの機器しかないため、私たちの予想を上回る金額だった」と林氏は驚きを隠さない。
今後多くの企業からローカル5G向けの機器が販売されれば、より低廉化する可能性はあるが、「最初に提示された見積もりでは、なかなか広がりにくいだろうというのが正直な感想」(割田氏)という。
そもそも企業がローカル5Gを導入する際には、ローカル5Gの環境だけでなく、その目的に合わせてセンサーやクラウド、ネットワークカメラなども必要になる。「ローカル5Gを事業に活用しようとすると、もっと費用がかかるのではないか」と事業統括本部 アクセス事業本部 アライアンス事業部長の高田幸一氏は指摘する。
(左から)GMOインターネットの割田太郎氏、林泰生氏、高田幸一氏
ローカル5Gは、導入までの「調整」に多くの手間がかかることも課題だ。
GMOインターネットは当初、NSA(ノンスタンドアローン)構成での導入を予定していた。しかし、自営BWAをアンカーバンドとして利用するNSA構成は、SA構成よりもさらに調整先が増える。構築納期への影響が大きいことと将来性を考慮し、SA構成に切り替えたという。