「4G/5Gの商用サービスで携帯キャリアが担っている通信品質の確保は、ローカル5Gでは導入企業や自治体など利用者自身、あるいはシステムインテグレータに委ねられる。ローカル5Gにはさまざまな分野から多くの企業が参入しているが、移動・固定通信事業の経験のない企業が携帯キャリアと同じ手法・レベルで通信品質を確保するのは、知見やコスト面などから非常に敷居が高い。アンリツは、キャリアの通信ネットワークで培ってきた計測・試験技術と知見を生かして、ローカル5Gの通信品質を確保できるソリューションを提供し、普及に貢献していきたいと考えている」
アンリツ 通信計測営業本部で第1営業推進部長を務める隨念英生氏は、同社のローカル5G向け試験ソリューションへの取り組みをこう説明する。
(右から)アンリツ 通信計測カンパニー グローバルセールスセンター 通信計測営業本部 第1営業推進部長 隨念英生氏、loTテストソリューション事業部 第1ソリューションマーケティング部 主任 田中優氏
アンリツの売上の7割を占める通信計測事業。その中心となるのが移動・固定通信向けの試験ソリューションだ。中でも端末の接続試験に使われる基地局シミュレータはアンリツが強みを持つ分野で、国内外の通信キャリア、端末・通信モジュールメーカー、チップベンダーなどに広く採用されている。
「5Gでも開発の初期段階からクアルコムやメディアテックなどのチップセットベンダー、サムスンなどの端末メーカーとタッグを組み、端末の品質保証ができるソリューションをいち早く提供してきた」と隨念氏は胸を張る。
この他にも、無線ネットワークのエリア評価用として国内で圧倒的なシェアを持つ「エリアテスタ」をはじめ、移動通信網のバックホールに至るまでの全領域をカバーする測定・試験装置を提供、4G/5Gの通信品質確保に貢献している。
アンリツでは5Gを企業や自治体などが自営網として活用できるローカル5Gの普及により、こうした通信の試験需要が飛躍的に増大すると予想する。
隨念氏は、自らローカル5Gを導入する企業に加えて、その構築・運用を担うシステムインテグレータ、ローカル5Gをサービスとして企業などに提供する事業者なども有力な需要層になると見ている。
とはいえ、冒頭で隨念氏が指摘するように、規模の小さなローカル5Gでは、通信品質の確保に携帯キャリアと同等のコスト・労力を振り分けるのは難しい。そこでアンリツでは、携帯キャリアの品質確保の取り組みを参考に「ローカル5Gの現時点のフェーズにおいて、最低限これだけのことをしておかないと将来品質面でのトラブルが避けられない」と考えられる項目を抽出。これを実現するための製品・ソリューションを用意している(図表1)。
図表1 ローカル5Gのサービス品質確保に必要となる評価項目例(青枠内)
「1年ほど前から、ローカル5Gの品質を確保するには、何が必要になるかを調査してきた。現在示している枠組みは仮説検証の段階だが、ローカル5Gへの参入を考えている企業や自治体、システムインテグレータの多くが、検証の重要性を認識するようになってきている」と隨念氏は語る。さらに「品質確保は法律で義務付けられているものではないが、十分な対策が取られずにトラブルが発生すれば、企業や自治体がローカル5Gで計画しているビジネスに支障が生じかねない」と危惧する。