ローカル5G活用モデルの創出を目的として全国各地で行われている総務省のローカル5G開発実証。令和3年度は26件が実施され、令和4年度も20件が予定されている。
その多くで通信事業者や大手SIerが代表機関を務めるなか、“地域DX”案件で目立つのがケーブルテレビ(CATV)事業者である。令和3年度は5件、令和4年度も計4件が選定されている。
「巨大企業ばかりの中で、地域勢として頑張っているのがCATVだ」と語るのは、日本ケーブルテレビ連盟(JTCA) 事業企画部 部長の熊谷充敏氏だ。ローカル5Gの免許人についても、全106者(2022年3月時点)のうち20がCATV事業者である。
総売上高1.3兆円(JTCA会員ベース、2020年)の半分を通信事業が占める今のCATV業界にとって、ローカル5Gは成長戦略に欠かせない武器だ。
JTCAは2021年6月に策定したアクションプラン「2030ケーブルビジョン」で、CATV事業者の将来像を「地域DXの担い手」と定義。地域DXの基盤となる有線・無線ネットワークの提供を戦略の柱の1つに掲げる(図表1)。地域BWAを展開しているCATV事業者も約100社に上るが、「下りでギガの速度が出ることがローカル5Gの魅力だ。今後、地域の通信インフラの中核の1つになっていく」と熊谷氏は展望する。
図表1 CATV事業者が提供する地域ネットワークのイメージ
ユースケース開拓のキーワードは「準公共分野」と「地域活性化」だ。
防災や観光、教育、医療・介護など行政サービスだけではカバーしきれない準公共分野の課題解決に貢献する一方、地元企業のデジタル化も支援。CATVが運用・提供する地域ネットワークを自治体や地元産業が有効活用することでスマートシティの実現を目指す(図表2)。ネットワークインフラや活用ノウハウを地域でシェアすることで導入・運用コストを抑え、横展開もしやすくする。
図表2 2030ケーブルビジョンで描かれた「CATVが目指す社会像」の例
例えば防災分野では、水位センサーによる計測と4Kカメラ映像のAI解析によって、河川の水位変動を予測する実証を栃木市で実施した。CATV業界の無線事業を推進する地域ワイヤレスジャパンや栃木市のケーブルテレビらが参画。Sub6帯・SA構成および28GHz帯・NSA構成の両方で映像/センサー情報を収集し、AI解析によって避難情報等の発令判断を支援する。また、CATVインフラを使って地域住民へリアルタイムに映像配信することで、避難意識を高める効果も狙う。
沖縄県浦添市では、台風等でテレビ放送や公衆通信網の受信障害が発生した場合に、ローカル5GによるIP映像配信で応急復旧することを目的とした実証を行った(地域ワイヤレスジャパン、沖縄ケーブルネットワーク等)。地上波の受信アンテナやCATV引込線が破損・断線した場合に、ローカル5GによるIP配信へ切り替えて防災・減災情報を早期かつ確実に提供する。