「ローカル5Gサミット 2023」が11月8日、東京・御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターで開催された。
丸文 アントレプレナ事業本部 イーリスカンパニー 情報通信課の宮本駿氏は「海外のプライベート5Gの普及が進んでいるポイントは?~脱PoCを後押しするポイントの考察~」をテーマに講演した。
ローカル5G推進団体の5G利活用型社会デザイン推進コンソーシアムが発表した2030年までの普及ロードマップによると、現在、ローカル5Gは導入期と位置付けられる。2025年以降は普及期を迎えるが、「ローカル5Gの本格普及には、ユースケースの創出という課題を解決する必要がある」と宮本氏は指摘した。
現状、PoCの件数は増えているものの、ローカル5Gならではのユースケースが定まっていないことが、商用導入への移行を妨げているという。一方、海外では、プライベート5Gならではの特徴を活かした様々なユースケースが生まれている。
インドの自動車部品製造工場では、鋳造のための機械であるダイカストマシンとタブレットの管理ツールとのリアルタイム通信に当初Wi-Fiを使用していたが、十分なセキュリティを担保できなかったうえ、リアルタイム通信を行うことが難しいという課題があった。このためプライベート5Gを導入したところ、SIM認証でセキュリティが強化されるとともに、より低遅延でのリアルタイム通信が可能になったという。
米ラスベガスのゴルフコースは、ライブカメラによるビデオストリーミングにWi-Fiを使用していたが、全長約6k㎡あるコース全体をカバーするには大量のアクセスポイントを設置しなければならず、しかもWi-Fiではストリーミングの品質が安定しなかったことから、プライベート5Gに移行した。
ドイツでは、10k㎡の敷地をプライベート5Gでカバーしたオープンキャンパスで、ドローン撮影や5G内蔵カメラによる番組作成、スポーツ中継など様々な映像アプリケーションの創出に向けた取り組みが行われている。
宮本氏は、これらの事例から分かるプライベート5G導入のメリットとして、セキュリティの担保、リアルタイム通信、広域エリアの3点を挙げた。なかでも広域エリアをカバーできる点は「国内でもローカル5Gの特徴の1つとして、ユースケースが出始めている。今後、ユースケース創出の鍵になるのではないか」と語った。