リモートワークが“普通の働き方”として定着するなか、そうした柔軟な働き方を阻害するある難題が顕在化している。
1つが、PCのパフォーマンス不足に起因する問題だ。特に、VDIを使うリモートワーカーの大きな悩みとなっている。
コロナ禍を経て、私たちが仕事で使うアプリケーションは様変わりした。Web会議が日常的なコミュニケーションツールとなり、業務に用いる写真・画像ファイルの取り扱いが増えてデータが大容量化。動画を視聴する場面も大幅に増え、社員研修ではeラーニングも一般化している。PCの負荷は増すばかりで、「表示が遅い」「動画がカクカクして見づらい」といった問題が噴出し、リモートワークの生産性を削ぐ要因となっている。
図表1 リモートワーク(VDI)の現状と課題
その一方で、そもそもリモートワークに移行できない人たちもいる。グラフィックスを多用するゲームや映像制作、3D CADを用いる設計デザイン、CAEやAIでの研究開発といったプロフェッショナル業務のワーカーだ。高性能なワークステーションが必要なためVDIに移行できず、コロナ禍でも出社を続けているケースが多い。のみならず、社内でも自席に縛られ移動がままならない状態に置かれている。
こうした課題を解決し、プロフェッショナル業務も含めて快適なデジタルワークスペースを実現するにはどうすればいいのか。そのカギは「GPUにある」と話すのは、エヌビディア エンタープライズ事業本部 vGPUビジネス開発マネージャーの後藤祐一郎氏だ。同氏によれば、上記の課題は「GPUの有無」が大きく影響しているという。
Windows 10以降のPCは「GPUを使うことが当たり前」になっている。
GPUはグラフィックスの処理と計算の処理に特化したプロセッサであり、大量のコアを搭載し、グラフィックスや計算処理を一気に実行することができる。もう1つのコンピュータの頭脳であるCPUとは異なる役割を担っているのだ(図表2)。
図表2 CPUとGPUの違い
Windows 10以降はOSが標準でGPUを利用するように変化している。マルチモニタの利用、高精細な画像やグラフ、動画コンテンツなどの利用頻度が増えたことで、今や一般的なデスクトップPCやノートPCを使うオフィスユーザーの業務でも「GPUを標準的に使う」(後藤氏)。コロナ禍で一気に普及したWeb会議はその代表例だ。デジタルエクスペリエンスのモニタリング・分析を手がけるLakeside Software社によれば、GPU使用率は2015年から2020年に約2倍に上昇。私たちが意識しないまま、GPU利用率はすでに99%に達している。
そして、GPUの必要性は今後ますます高まる。その要因となるトレンドを並べたのが図表3だ。Windows 10以降、ノートPCにGPUが標準搭載される理由はここにある。
図表3 リモートワーク環境で今後見込まれる変化
だが、残念ながら現在のVDIの仮想環境には「GPUがほぼ用意されていない。その状態でPC作業環境をVDIに集約して利用していることで、様々な問題を引き起こしている」と後藤氏は指摘する。
これを打開する方法は至ってシンプルだ。仮想環境でGPUを効率的に使えるようにする「仮想GPU」である。GPUのリソースを仮想的に分割し、複数の仮想マシンで共用できるようにすることで、冒頭に挙げた課題をまさに一掃することが可能だ。