オンライン会議の進化は止まらない

オンライン会議は私たちの生活に欠かせないものとなった。対面の会議に拘る人も少なくないが、「今は大学生もオンラインで授業を受けている。彼らが入社すれば、さらに企業の意識は変わっているだろう」とシード・プランニング 主任研究員の原健二氏は語る。

主要なオンライン会議サービスの動向を見ると、最近ではグループウェアなど他ツールとの連携やセキュリティ強化等がメインになっている。「実はオンライン会議の基本的な性能については数年前からあまり差がない」(原氏)。基本機能が成熟化する一方、新たな要素を組み合わせ、より高度なコミュニケーションを試みる動きが広がっている。

シード・プランニング 主任研究員の原健二氏
シード・プランニング 主任研究員の原健二氏

「例えばVRやスマートグラスとの組み合わせだ」と原氏は紹介する。VR/AR/MRのプロダクト開発を手掛けるSynamonは、VRの会議・イベントシステム「NEUTRANS BIZ」を提供している。ヘッドマウントディスプレイでクラウド上のVR空間に参加し、アバターを操作してコミュニケーションをとる。VR空間では3DCGや、360度カメラで撮影した静止画や動画を共有可能なため、現実での会議以上の体験も期待できる。

また、オフィスにいながら現場を確認するためのツールも出た。エリジオンは自社開発の点群処理ソフト「InfiPoints」にVR対応機能を追加した。

通常、施工管理などにおいては、遠隔地にいる関係者は図面などを見ながら打合せするが、3Dスキャナーなどで計測・撮影したデータなどから、現場を模したVR空間を再現。現場の状況をVRで詳細に確認しながら打ち合わせできるため、手戻りなどを防ぎやすくなるという。

自身の分身となるアバターロボットを用いた遠隔コミュニケーションへの期待も高まっている。NTTは2020年7月1日、障がい者による受付業務をテレワーク化するためオリィ研究所の「Orihime-D」を導入したと発表した。カメラ・マイク・スピーカーが内蔵された全長120cmのロボットで、人間のように身振り手振りを交えて会話したり、物をつかんで運ぶなど一部接客業務も可能だ。

さらに、成熟したかのように見えたオンライン会議の基本機能にイノベーションをもたらそうという動きも出てきた。今、脚光を浴びているのは、Evernote創業者のPhil Libin(フィル・リービン)氏が代表を務めるmmhmm社が発表した「mmhmm」(ンーフー)である。基本的にZoomなど既存のオンライン会議と連携して使われることを想定したビデオアプリだ。いくつかの機能があるが、高い評価を得ているのが、カメラ映像の背景にプレゼン資料をリアルタイムに合成できる機能である。写真のように資料と人物を同時に映すことが可能だ。

β開発中のmmhmmのデモ画面

β開発中のmmhmmのデモ画面。静止画や動画を背景に合成する、
自身の姿をぼかす、位置を移動させるなどプレゼン向きの機能が備わっている
出典:https://www.youtube.com/watch?v=c8KhKBLoSMk



リービン氏は既存のオンライン会議のUIについて「自分を見てもらうか、資料を見てもらうかしか選べない」と指摘。mmhmmなら両者を映すことができ、現地でプレゼンをしているかのような演出が可能になる。

今後はテクノロジーの進化も、テレワークでのコミュニケーションを加速させるだろう。

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