レベル4解禁後のセルラードローン動向 5Gも上空利用可能に

総務省は2022年11月、携帯電話の上空利用拡大に向け、情報通信審議会 情報通信技術分科会 新世代モバイル通信システム委員会の報告書案を発表した。同報告書案では(1)ドローン等に搭載したモバイルネットワーク端末の高度150m以上での利用、(2)ドローン等が上空で利用できるネットワークに5Gを追加といった、大きく2点の規制を緩和する検討案が示された。

今後、情報通信審議会での議論やパブリックコメントを経て、制度改正が行われる見込みで、「2022年度内を目途に制度改正を目指している」と総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課 課長補佐の赤川達也氏は語る。規制緩和の詳細について、1つ1つ確認していこう。

空飛ぶクルマがモバイルで

(1)高度150m以上を飛行するドローン等のモバイルネットワークの利用は、そのニーズが顕在化しつつあることから、規制緩和の検討に至った。「例えばインフラ点検では、高い位置から俯瞰的に点検したいという要望や、谷底などの電線を点検したいというニーズがあった(図表1)。ドローン以外にもヘリコプターで需要があり、ドクターヘリで患者の映像やバイタル情報を病院に送信するなどの用途がある。さらに、これから技術検証が行われる、いわゆる『空飛ぶクルマ』にもニーズがある」と赤川氏は説明する。

図表1 高度150m以上のユースケース

図表1 高度150m以上のユースケース

高度緩和の具体的な技術的条件だが、対象の周波数は800MHz帯、900MHz帯、1.7GHz帯、2GHz帯。利用にあたっては、携帯電話基地局からの制御情報に基づき、上空端末の送信電力(空中線電力)が最小限になるように制御する機能が必須とされた。「送信電力制御については携帯電話事業者が機能を実装することになるため、携帯電話事業者に申し込み、上空利用専用のSIMを用意すること以外には、利用者側での電波法上の準備は基本的に必要ない」と赤川氏は話す。

(2)5Gの上空利用に関しては従来、「日本では学術研究や実証実験などの限られた用途でしか5Gの上空利用ができなかった」と赤川氏。

一方すでに海外では、5Gを活用したドローンの実証が積極的に行われている。

例えばスペインのオレンジは、5Gドローン港湾監視システムを構築。港湾の安全確保のため、非許可エリアの映像をMEC(Multi-Access Edge Computing)に送信し、立ち入った人がいないかなどを解析している。MECで画像処理の遅延を削減しながら、リアルタイムに自動でアラートを出せる仕組みを実現していることが特徴だ。

このように海外ではドローンでの5G利用が始まっていることを背景に、新世代モバイル通信システム委員会の上空利用検討作業班では、通信事業者から5G利用の緩和を要望する声が上がっていた。例えばKDDIはゴルフ大会をドローンにより空撮して中継した事例を引き合いに、テレビ中継には高速・低遅延かつ安定した通信が求められており、5Gやネットワークスライシングによる優先制御等の導入が望まれていると提言している。こうした意見を踏まえ、FDD-LTE帯域のうち、現在、上空利用が可能な800MHz、900MHz、1.7GHz、2GHz帯において、上空端末用の電力制御の機能が盛り込まれていれば、高度150m以上も含めて5Gの上空利用が可能になる。

なお、解禁されるのはFDD方式を用いたLTEや5Gで、「TDD方式については今後検討予定」(赤川氏)だ。

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