インターネットが生活やビジネスに不可欠な存在となって久しいが、COVID-19の世界的な流行で在宅勤務やハイブリッド学習が進み、ますます存在感は増すばかりだ。それに伴って、トラフィックも年間約35%もの速度で増加の一途をたどっている。それを支える通信事業者は、いかに設備投資だけでなく運用コストも抑えながら増大を続ける需要に応えるかという困難な課題に直面している。
シスコはこの難問に対し、「シリコン」「オプティクス」「ソフトウェア」「システム」という4つの分野でイノベーションを促進することで解決を図ろうとしている。そして次世代の「Converged SDN Transport Architecture」へのアーキテクチャシフトを推し進め、ネットワークのシンプル化やTCO削減を実現し、ひいては「インターネットの経済性」を再定義することを目指している。
ネットワーク運用の自動化は「あったらいいね」から「必須条件」に 通信事業者を取り巻く環境は激変している。5Gの普及やコンテンツ配信の成長にともなってトラフィックの絶対量が増加するだけでなくパターンも変化し、エッジ側が果たす役割が高まってきた。あわせて、仮想化やコンテナといった新たな技術の導入が進み、ネットワーク構成も複雑化している。
この結果、「通信事業者にとってネットワーク運用は、大量の人間を投入して何とかなる段階をもはや過ぎました。自動化は『Nice to Have』ではなく、必須条件になっています」と、シスコのテクニカル ソリューションズ アーキテクトの佐々木俊輔氏は指摘する。
シスコ テクニカル ソリューションズ アーキテクトの佐々木俊輔氏
通信事業者におけるネットワーク運用はこれまで、経験豊富なオペレーターが絶妙なバランスで実現してきた。だが、デバイスもユーザーもトラフィックも増加を続け、それらを支えるネットワークアーキテクチャの複雑性も増す中では、シスコが提唱する4つの「ネットワーク自動化設計の原則」を重視しながら自動化を進める必要があるという。
図表1 シスコの考える「ネットワーク自動化設計の原則」
原則の1つ目は、ネットワークを1つの大きな塊ではなく、分割し、階層化して管理することで問題が起きたとしても影響を極小化する「管理ドメインの分割と階層化」だ。2つ目は、「人のやりたいこと」にフォーカスしてシステム側が自動的、自律的に動く「Intent-based interfaces」で、シスコがかねてから提唱してきた「Intent-Based Networking」に通じた考え方だ。3つ目は、「モデル駆動形のサービスデザイン」で、各自動化コントローラが、それぞれ自分ができるサービスを定義し宣言することにより、明確な責任範囲の下で自動化を進めることができる。そして最後は「クローズド・ループと運用ライフサイクル全般にわたる監視と制御」で、設定を投入して事足れりとするのではなく、情報収集と可視化・分析、トラブルシューティングといった運用のライフサイクル全般を考慮した自動化設計にしておく必要がある。
ネットワーク運用は長く、手順書に沿った人手による運用に頼ってきた。だが、これからのネットワーク運用は、人間中心の発想から脱し、AIや機械学習といった技術を活用したシステムを想定して設計していく必要がある——シスコはそのように考えている。