データセンター事業者が現在直面している最大の問題が「脱炭素」である。2021年時点で我が国を含めて125カ国が、2050年までに温室効果ガスの吸収量が排出量を上回るカーボンニュートラルを目指すと宣言しているなど、世界的に脱炭素の取り組みが求められている。なかでも電力消費が多いデータセンター業界の責任は大きい。
「脱炭素の取り組みはハイパースケーラーが先行している」と情報通信総合研究所(ICR) ICTリサーチ・コンサルティング部 主任研究員の左高大平氏は話す。
例えばアマゾンは当初の2030年から前倒しして、2025年までに自社が利用する電力を100%再生エネルギーで賄うと表明している。アマゾンは2021年9月、三菱商事と22メガワット(MW)もの太陽光発電による電力購入契約を締結するなど、積極的な姿勢を日本でも見せている。
「現在は投資家も脱炭素の取り組みを厳しく見ており、ハイパースケーラーも株主に対してグリーン化をアピールする必要がある」と左高氏は背景を解説する。
ところが、「国内の事業者はグリーン電力であろうとなかろうと、まずは電力を安定的に確保することに注力している」と左高氏は分析する。
ミック経済研究所の推計によればデータセンターは2018年時点で、日本国内の電力の1.5%を利用しているが、世界のIPトラフィックは年々膨張し、2050年には2018年と比べて約4000倍にもなると予測されている。トラフィックが集積するデータセンターもこれらを省電力で捌く対策が早急に求められている。
しかしながらIT機器の省電力化技術は頭打ちになっており、「冷却するための空調技術でも効果は限定的」(IDC Japan リサーチマネージャーの伊藤未明氏)であるのが現状だ。ユーザーに場所を貸しているだけの事業者も多く、そういった事業者はさらに打つ手が限られる。
これらの背景に加えて昨今の電力不足により、今は脱炭素以前に、データセンターを運営するための電力確保に苦心している状況なのだ。