2022年に2兆円を突破したDC市場規模は、2028年には5兆円の大台に乗る見込みだ(令和7年版 情報通信白書)。2026年から2028年が新設のピークと予想され、今後も力強い成長が続く。
この市場で予想される大きな変化が、分散化だ。現在は東京・大阪近郊に全DCの8割が集まっているが、ソフトバンク等がDC建設を進める北海道や、グーグル関連会社が建設を開始した広島県三原市など他地域での新設が増加。2026年以降は、首都圏からの分散需要を取り込む動きが加速しそうだ。
分散化の理由は、災害リスクや地価・建設コストの高騰といった課題解決、そしてAI向けDCで必須となる大規模電源の確保、低炭素化などがある。ガートナージャパン ディレクターアナリストの山本琢磨氏は、「日本のDC事業者はAI需要の増加に対する準備が遅れている」と指摘する。北米ではアマゾンやメタ、グーグルらが原子力発電へ投資するなど、AIの成長に向けた準備が進展。欧州でも、DC建設は再エネに加えて外気冷却や氷水利用冷却を活用できる北欧への移設・新設が加速している。日本でも同様の動きが本格化する期待がある。

世界中で進むDC分散化を背景に、AI時代のDCインフラを実現する技術コンセプトとして、にわかに注目され始めたのが「スケールアクロス」だ。
これは、電力や容量の限界を超えてDCの能力・規模を拡張するために、エヌビディアが提唱・推進している新しい概念だ。離れた場所にある複数のDCを1つの“巨大なAIファクトリー”として機能させるもので、スケールアップ、スケールアウトに次ぐ第3の拡張技術として位置づけられる(図表1)。
図表1 第3の拡張方法「スケールアクロス」

エヌビディアは、このスケールアクロス機能を追加した「NVIDIA Spectrum-XGS Ethernet」も2025年8月に発表している。
スケールアクロスとは簡単に言えば、単一の拠点を超えてスケールアウトすることだが、通信距離が格段に伸びるため、既存のイーサネットでは遅延もジッターも大きくなり、パフォーマンスを安定させるのが難しい。そこで、Spectrum-XGS EthernetではマルチGPU通信を高速化したうえ、AIクラスターで必須となる輻輳制御や遅延管理等の機能を拠点間の距離に応じて自動調整する機能を実装している。
これにより、都市や国、大陸をまたいだDCの統合運用、サイト間で数百万台のGPU接続が可能になるという。最初の導入企業として、AI開発者など向けにGPUインフラを提供するネオクラウドの1社、CoreWeaveの名前が挙がっている。
これほどの規模を必要とするのは当面、ハイパースケーラーやネオクラウドに限られるだろうが、スケールアクロスのコンセプト、分散DCの連携・統合を実現する技術は、これからのDCインフラ構築に欠かせない要素となる。
NTTもこれまで、APN(オールフォトニクス・ネットワーク)をはじめとするIOWN技術をDC連携・統合に活用する方針を打ち出してきているが、それもスケールアクロスと目的は同じだ。政府が推進するDCの地方分散、ワットビット連携の流れともまさに合致する。
