
東京大学大学院 工学系研究科 教授 中須賀真一氏
――宇宙産業の市場規模は2030年に1兆ドルへ成長するという予測があります。日本も10年間で総額1兆円規模の宇宙戦略基金を設立し、宇宙産業の拡大に注力していますが、宇宙産業では今、何が起きているのでしょうか。
中須賀 これまで宇宙開発は、政府が主になって民間に発注する形で取り組んできました。その主体が民間に降りてきているというのが、今起きている大きな変化です。宇宙開発の歴史は、4つの世代に分けられます。第1世代は研究者が個人的に取り組んでいた第2次世界大戦前、第2世代は米ソを中心に各国が開発に乗り出した戦後、第3世代では政府が民間企業に発注してロケットや衛星を作らせ、その成果を政府が利用します。
そして現在、民間企業が政府資金に加えてファンドなどを活用しながら技術開発に取り組み、その優れた成果を政府が「顧客」として購入するという第4世代が、米国を中心に登場しています。今は第4世代と第3世代が混在している状況です。
――こうした変遷は、宇宙産業の「民主化」の歴史と捉えられると思いますが、何が民主化を引き起こしているのでしょうか。
中須賀 大きな原動力は、小型・超小型衛星の画期的な技術発展であり、特に、低軌道を飛行する小型衛星コンステレーションです。小さな衛星を大量に打ち上げることで、これまでにない頻度や即時性を持ったサービスが提供可能になり、小型衛星コンステレーションを前提としたビジネスで実績を挙げるスタートアップ企業が増えています。
従来は、政府が仕様を細かく決め、企業に衛星やシステムを開発させ、それを政府自身が運用する形が一般的でした。しかし、最近は、民間企業が自ら投資して衛星を打ち上げ、観測データや通信といったサービスとして提供し、それを政府や自治体、防衛分野が必要に応じて「利用者」として購入するという形が増えています。