ウフル園田CEO「地域DXの勝ち筋は“オープン”」

地域DXは1年や2年で実現する仕組みではなく、最近では各自治体が10年後を見据えて、地域社会をどのように持続可能にするかというビジョンを出している。明確なビジョンがあるかないかで取り組み方は大きく異なる。

首長の熱意や意識は非常に重要だが、交代することもあるので職員・体制も同様に重要だ。地域DXは様々な企業が参加する。解決すべき課題のプライオリティ付けやスケジュール管理、ゴール設定などの意思決定は自治体が決め、一方、参加する企業は積極的に情報開示する必要がある。情報の発信源には様々な情報と人が集まり、物事が前に進んでいく。

地域DXの体制や仕組みを作るうえでは、最初から「オープンにやります」というスタンスが必要不可欠だ。そこは、これまでなるべく他者を入れずに、情報を開示しないことを勝ち筋として行政システムを構築・運用していた業者と自治体との関係とはまったく違う。デジ田はイノベーションを起こさないといけない話。どんな企業であっても、1社で地域課題を解決することは限定的で、様々なステークホルダーとの連携を前提にする必要がある。

ウフル 園田崇史氏

ウフル 代表取締役社長CEO 園田崇史氏

インターネット発展に倣え

そのため、当社が作る都市OSのアーキテクチャは、サードパーティが触わることができる仕組みにしている。でなければ、自律的・協調的な仕組みにならないからだ。そこが通常の行政システムと都市OSの違いだ。

都市OSやスマートシティは、インターネットの発展の延長線上に起きていることだと思っている。軍事技術から大学間ネットワークになり、ブラウザが生まれて個人が使えるようになった。モバイル、IoT、ソーシャルになり情報が従来とは違う形で生み出され、つながりになったからこそ非常に有用な社会インフラになり、そこからカルチャーすら生まれてきた。

オープンにつながる前提で考えていくのと、そうでない形でやるのとでは、数十年後に天と地ほど差が付く。地域DXも同じだ。

ただし、インターネットはポータルサイトやEC・決済など、何らかのキラーアプリの登場により普及した。地域DXも、人々が「それがあるといいよね」というアプリケーションが比較的早い段階でできないと進まない。キラーアプリの開発と、長期を見据えたデータ連携の仕組みは地域DXの両輪。そのバランスを取りながら進めていかなければならない。

日本では人口減少の中で、データをうまく使って人手をかけずに観光や復興、防災やモビリティ、ヘルスケア等の課題を解決したいという自治体が多い。1年程度で、観光客や事業者が利便性を実感できる仕組みが作れるので、そこを入口にする。

例えば、和歌山県太地町では、ヤマハ発動機の低速自動走行車で、高齢化が進んだ地域の住民の足を確保した。お年寄りが外出する機会が増えて健康寿命が延びる。高齢化対策として早期に始めやすいサービスであり、効果も実感していただきやすい。

通信環境の整備が必要な地域も多い。我々が戦略的に取り組んでいる和歌山県でも、通信手段がないエリアがあり、インターネットの可能性を引き出せてない。5Gを普及させるなど、やるべきことは山ほどある。

携帯電話事業者は個人向け以外のビジネスを作っていこうとしているが、スマートシティやデジ田では居住地以外でもつながってほしい場所が増えてくる。そこには大きなビジネスチャンスがあると思っている。

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