ファイル転送というと、企業のシステムとシステムの間、サーバとサーバの間でバッチ処理的に行うもの、というイメージが強いかもしれない。モバイル、クラウドがまだ広く普及せず、オンプレミスという閉じた環境で各種の処理が完結していた時代ならば、それで十分ニーズを満たすことができただろう。
だが、「データ駆動型社会」と言われるように、企業と企業、企業と個人、あるいは個人と個人の間で、さまざまな手段やデバイスを介してデータやファイルが転送されたり、共有されたりするのが当たり前となった今の時代、定型処理をこなすだけのファイル転送システムだけではもの足りない。多様化するファイル転送ニーズを満たすには、どんな機能が必要だろうか。
既存のファイル共有方法はいずれも「帯に短し襷に長し」 新型コロナウイルスの影響もあって、最近ではテレワークで業務を進めることが珍しくなくなった。この環境の中で、たとえば企業をまたいだプロジェクトに必要な大容量のデータを社外の関係者と共有するにはどうしたらいいだろうか? また、オンラインサービスを展開する中で、取引に必要な機微な情報、個人情報を顧客から受け取りたい場合、どのような手段を取るだろうか?
日本企業で最もよくあるパターンは、パスワード付き圧縮ファイルを作成し、別々のメールで送付する方法だろう。手軽でほとんどコストがかからないこともあり、広く採用されている方法だ。しかし、「パスワード付き圧縮ファイルには、セキュリティ面で多くの問題があります」とプログレス・ソフトウェア・ジャパン 日本事業統括の市原裕行氏は指摘する。メール自体が盗聴されている前提ならば、いくらパスワードをかけたところで、同じ経路で送付している以上意味がない。
また最近増えている手段が、DropboxやOneDriveといったクラウドベースのファイル共有サービス、いわゆるEnterprise File Sync & Share(EFSS)を利用する方法だ。ただ、個人単位で小規模に使う分ならばまだしも、全社的に導入すると予想外にコストが膨らむことに、意外と気付かないケースが多い。加えてエンタープライズと銘打ってはいるが、元は個人向けサービスから始まったこともあり、利用者の認証や厳密なアクセス制御といったセキュリティ面でも十分とは言いがたい。
国内では無償で利用できるWebベースのファイル共有サービスもいくつか展開されているが、そのほとんどは容量に制限がある。このため、動画をはじめとする大容量のデータやファイルを授受しようとすると、上限に引っかかってしまい難しい場合が多い。
このように、なかなか「これ」という選択肢が見当たらない状況だが、実は幅広いファイル転送ニーズに対応できるソリューションが存在する。