日本国内において、ヘルスケア分野におけるAWSの活用は多岐にわたっている。
アマゾンウェブサービスジャパン(AWSジャパン)インダストリー事業開発部 シニア事業開発マネージャーの佐近康隆氏によれば、研究機関・医療機関等の情報インフラとして使われているほか、健康医療機器で用いられるヘルスケアデータの連携基盤として、あるいは病院・調剤薬局の情報共有、遠隔医療支援など様々な用途でAWSサービスが利用されているという。
AWSジャパン インダストリー事業開発部 シニア事業開発マネージャーの佐近康隆氏(右)と、
オンライン診療サービスを提供するMICIN CEO 医師の原聖吾氏
たとえば、遠隔医療支援では、アルムが開発・提供し和歌山県などで利用されている医療従事者向けコミュニケーションアプリ「Join」や、京都プロメドの遠隔画像診断システム「京都ProMed」がある。どちらもAWS上で開発されており、連携して新型コロナウイルス感染症対策支援にも用いられている。
京都ProMedとJoinの連携システム図
そして今後利用が広がりそうな分野が、新型コロナ感染拡大を契機に規制が緩和されたオンライン診療だ。今回の記者説明会では、2016年からAWSを利用してオンライン診療サービス「Curon(クロン)」を提供しているMICINのCEOで医師の原聖吾氏が、その導入状況と、AWSを活用することのメリットを解説した。
Curonは診察の予約から問診、受信、処方箋の受け取りまでをスマートフォンで完結できるサービスで、現在3500を超える医療機関に導入されている。サービス開始時からAWSを利用しており、原氏はそのメリットとして次の3つを挙げた。
スマホで診療予約から処方箋受け取りまで完了できる。
導入施設数は、今回の説明会開催時点で3500まで増えているという
1つは、豊富なマネージドサービスを活用できること。「我々のようなスタートアップでも、エンジニアリソースが限られるなかで必要な機能を容易に実現できる」と強調した。
また、新たなサービスを迅速に立ち上げられることも大きなメリットだという。今回、新型コロナ関連の新機能/サービスを開発するにあたっても、Amazon ECS(Dockerコンテナの実行・管理)やRDS(リレーショナルデータベース)等を用いて、素早くサービスを立ち上げることができたという。
3つめは、スケーラビリティだ。「新型コロナにより短期間にユーザーが増えたが、アーキテクチャを変えることなくスケールできた」(原氏)。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、医療機関からの問い合わせや新規登録数が急増している
今年2月、新型コロナに係る診療報酬の臨時的な取り扱いが認められるなど、オンライン診療に関する規制緩和が行われ、今後、対象疾患の拡大なども予想されている。こうした制度変更により、オンライン診療に対するニーズも大きく高まっているという。原氏によれば、新規患者の登録数は、1月の平均と比べて4月は約10倍に増加。医療機関からの問い合わせも約10倍に急増している。