ソラコムに聞く「後付けIoT」成功の秘訣 生産現場にAIの目を置く

工場では、設備制御を担うOTネットワークと、業務システムを担うITネットワークを分離する構成が一般的である。OTネットワークの中でも、PLC等が接続される制御ネットワークは安定稼働を最優先とするため変更が難しく、設備データの収集・活用が進みにくい要因になることもある。

こうした環境でも比較的導入しやすい手法として広がっているのが、既存環境に大きな変更を加えずに、IoTセンサーや通信回線を追加してデータを収集する「後付けIoT」(レトロフィットIoT)だ。

「設備の遠隔監視に関する相談はほぼ毎週寄せられる。最近は、“データがないとAI活用を始められない”という認識が広まったことで、IoT化の問い合わせが増えている」

製造業のIoT導入の状況について、ソラコム ソリューションアーキテクトの服部政洋氏はこう語る。

ソラコム ソリューションアキーテクト 服部政洋氏

ソラコム ソリューションアキーテクト 服部政洋氏

IoTプラットフォーム「SORACOM」を提供する同社でも、製造業からの相談が増えているという。既存の工場ネットワークを変更せず、SIM内蔵センサーとセルラー回線を追加して現場データを収集する構成は、比較的短期間でIoTを立ち上げられる手法として定着している。

工場IoTの入口としては遠隔監視が多いが、データ収集と分析の範囲が広がり、AI活用のハードルも下がったことで、遠隔制御や予知保全、予防検知などへ発展する例も増えているという。後付けIoTが製造現場でどのような成果を挙げているのか、導入を進める際のポイントを見ていこう。

「素早い立ち上げ」を最優先

日本の工場IoTは、設備保守の担当者などが業務効率化を目的に始める“現場主導”のケースが少なくない。設備データが集まる保守センターへ出向いたり、監視対象設備にPCを接続してデータを取り出したりといった作業の負担を軽減することが、導入の出発点になる。

対策としてまず思い浮かぶのが、リモートアクセス化だ。工場内の設備にVPNルーターなどを接続し、従来は現場のPCで行っていた作業を遠隔地からインターネット経由で実行できるようにする。

しかし、ネットワーク機器や回線の選定、設定作業には専門知識が必要となるため、工場設備の保守担当者にはスキル習得にかかる負担が大きい。実際に運用開始するまでに数カ月かかることも珍しくない。

服部氏は、IoTプロジェクトでは「早く成果を出し、関係者からフィードバックを得ることが重要」と指摘する。IoTの導入は現場担当者を中心とした小規模なチームから始まることが多いが、広い協力が不可欠であり、効果を早期に示して組織全体へ展開していく必要がある。

こうした課題に対しては、SIM内蔵デバイスや通信回線、データ可視化ツール等を組み合わせたパッケージ型ソリューションも登場している。

例えば、PLCに接続するだけでデータ収集を開始できるIoTゲートウェイ製品もあり、LTE回線経由でクラウドへデータを転送し、ダッシュボード画面で設備データを可視化できる。国内の大手自動車メーカーが製造データの自動収集や分析に活用し、複数拠点へ展開している例もある。

一方、自社でデータ分析基盤を持つ企業では、IoT回線やクラウド型プラットフォームを経由して収集データを自社データセンターやクラウドへ集約する構成も採られている。全社規模でのデータ活用や業務システムとの連携を見据えた構成として選ばれることが多いという。

いずれの方式でも、既存の制御ネットワークを変更せずに導入できる点が特徴だ。「制御ネットワークとデータ収集用ネットワークを分離することで、設備運用へ影響を与えずにIoTの導入を進めやすくなる」(服部氏)

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