あらゆる産業においてデジタル技術を活用したビジネス変革が進展するなか、その基盤となる通信ネットワークも大きく変わろうとしている。
通信キャリアや、クラウド/データセンター事業者等(以下、SP)では、これまでにないほど変革が加速していると語るのは、光/IPネットワーク関連ソリューションを幅広く提供している丸文の村上貴哉氏だ。大きく2つのトレンドが見られると指摘する。
丸文 システム営業第1本部 営業第2部 情報通信課 課長の村上貴哉氏(右)と、係長の田口宏氏
1つは高速大容量化だ。「キャリア網では400G化が始まった。また、DCI(データセンター間相互接続)も広帯域化の需要が非常に旺盛だ」という。同社の田口宏氏も「2019年から特にDCIの需要が顕著だ」とし、「DC内もDCIも100G化が急激に進んでおり、100Gトランシーバーが世界的に品薄になるほど」と現状を話す。
そしてもう1つ、通信キャリア/SPにとって大きな課題となるのが、ネットワークの高度化と複雑化だ。今や速度だけで差別化すること難しく、ユーザーを惹きつけるにはプラスアルファの要素が欠かせない。
そこでポイントとなるのが「低遅延と柔軟性」(村上氏)だ。5Gの特徴の1つである超低遅延通信やSD-WANによる柔軟な経路制御など、通信サービスに求められる機能と使い方はますます多様化する。
低遅延通信の監視を自動最適化 5G基地局の時刻同期にも解決策こうした時代に適応するネットワークをどのように構築して運用するのか──。キャリア/SPが直面する課題として、村上氏はパフォーマンス監視をはじめとする運用の難しさを指摘する。「低遅延通信を提供する場合、アクセスからコア網までエンドツーエンドで性能を監視・管理する必要がある。この観点でのご相談が最近増えている」という。
これに応えるソリューションとして丸文が提供しているのが、Accedian Networksの「Skylight」である。パケットキャプチャによるパッシブモニタリングと、試験パケットを用いるアクティブモニタリングの両方を駆使してパフォーマンス可視化・解析を行えるのがこの製品の特徴だ(図表1)。
図表1 アクセディアンネットワークスのネットワークパフォーマンスモニタリング
Skylightは、幅広いベンダー機器、データフォーマット・プロトコルに対応しており、ネットワークの各所に配置したセンサーが収集する情報を機械学習で解析する。このプロセスを自動化することで、迅速かつ効率的にネットワークの解析と対処が可能になる。「低遅延性など様々なKPIを設定して性能を監視できるほか、SD-WANやセグメントルーティングの導入により複雑化したネットワークの監視にも対応できる」(村上氏)ことが通信キャリアからの支持につながっているという。遅延要求が厳しい証券会社等を顧客に持つColtテクノロジーサービスがSkylightを採用していることからも、その解析能力の高さがわかる。
5Gの低遅延ネットワーク構築に役立つものとして、Microchip社やCalnex社の時刻同期ソリューションも提案している。光伝送網を流れる波長を用いて5G基地局間の時刻同期を行うものだ。
LTE基地局はGPS信号を用いて時刻同期を行うが、5Gでは基地局数が飛躍的に増えるので、同じ手法ではGPSアンテナの設置・運用負荷が大きくなる。
そこで、Microchip社は光伝送網で送られる1波長を時刻同期プロトコルPTPに使用し、広域に「ナノ秒レベルの同期精度」を実現できる製品を開発。これにより、例えば東京と大阪など数箇所にGPSアンテナを設置するだけで、全国レベルで高精度な時刻同期が可能になるという。大幅なコスト削減につながるうえ、「干渉波やジャミング波といった、GPSを使う場合に想定される脆弱性を解消できるメリットもある」と田口氏は話す。