モバイルルータの買い足しでは限界に福島県郡山市に本拠を置く福島コンピューターシステム(FCS)は、さまざまな業務アプリケーションや組み込みシステムの開発、保守に携わってきた。最近ではクラウドサービスの広がりを受けて自社システムの一部をクラウドに移行するとともに、そのノウハウを生かしたクラウド関連の開発も手がけている。
FCSの従業員数は約300名に上り、本社やいわき市など県内のほか、東京、北関東など複数の拠点で業務に従事してきた。ただ、客先に常駐する従業員や出張する管理職にはモバイルルータと専用のVPNソフトを配布し、例外的な措置としてテレワークを導入してきた。また、本人の体調や家庭の事情があってやむを得ない場合も、福利厚生の一環という位置付けで在宅勤務を実施していた。
こうした状況を一変させたのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の広がりだ。徐々に感染が広がり始めた2月後半から、時に取引先の要請もあって、FCSの在宅勤務者は増加していった。ICTソリューション事業部 執行役員部長を務める本多悟氏は、このころから、全社員が在宅勤務することも視野に入れて環境整備の検討に入ったと振り返る。
当初はこれまでの方法の延長線上で、モバイルルータを買い足しにより、しのごうと考えていた。だが、「2、3日のテレワークであれば3~5GB程度のパケット通信量でも十分でしたが、在宅勤務者が増え、Web会議が常態化するにつれ、1カ月の在宅勤務で30~50GB程度は必要になることが明らかになってきました」(本多氏)
福島コンピューターシステム株式会社 ICTソリューション事業部 執行役員 部長 本多悟氏
全社員に回線を用意するとなると、その費用は年間数千万円に達する見込みだった。加えて、これまで数名程度だったテレワーク対象者を250名以上に広げるとなると、準備と導入支援、サポート、アカウント情報の管理など膨大な作業が発生する。3人しかいない情報システム部のキャパシティを超えた作業量になると判断した。
そこで新たな選択肢として、従業員が自宅で利用しているインターネット回線を在宅勤務に活用する方法を検討し始めた。「ただ、業務に利用するPCを、一時的とはいえ安全が担保されていない家庭用のネットワークに接続しても本当にいいのかといった懸念もありました」
自宅のインターネット回線を有効活用し、VPNで従業員を保護しながら、ブリッジ接続によって、開発環境も含めこれまでとまったく同じ業務環境を提供できないか──そんな条件でソリューションを求める中で見つけたのが「Cisco Meraki Z3 テレワーカーゲートウェイ」(Cisco Meraki Z3)だったという。