COVID-19の影響により、社会は加速度を増しながら変化している。
通信事業者も従来通りとはいかない。セールスフォース・ドットコムの緒方幹人氏は、「カタログや課金管理、顧客情報管理といったシステムを個別に作り込み、サイロ化しているレガシーなシステムでは、現在の変化のスピードに対応できないのが実情です」と指摘する。
セールスフォース・ドットコム インダストリーズトランスフォーメーション事業本部
通信メディア担当ビジネス開発 緒方幹人氏
営業手法についても同様だ。ショップで顧客のニーズを聞きながら、あるいは法人営業担当が出向いて提案するスタイルでは対応が難しくなっている。
「単に固定回線やモバイル回線を売るだけではなく、在宅勤務やグローバルな拠点管理、工場設備管理といった様々なソリューションと組み合わせて付加価値を高めることが求められ、複雑化しています」(緒方氏)
刻々と市場が変化する中、顧客のニーズに合わせた通信サービスをいかに迅速に提供するか──。その実現の鍵は、「デジタル化・セルフサービス対応」と「標準化」の2つにあるとセールスフォース・ドットコムは捉えている。
コンシューマーの世界では徐々に「自分が欲しい回線や端末」をセルフサービス形式のポータルサイト上で選択して契約するスタイルが広がりつつある。
B2Bの分野でも同様に、営業担当を介さず、セルフサービス対応のサイトで契約する顧客接点のデジタル化が進む。
もう1つのポイントは独自システムから脱却し、グローバルな標準ベースでシステムを構成していくことだ。通信業界の標準団体であるTM Forumが策定したデータモデルやOpen APIをベースに、コンポーネントを組み合わせることで新たなシステムを作り上げる流れが広がっている。
長く独自システムにこだわることで高い品質を提供してきた日本の通信事業者も、かつてないスピードで変化する市場に追随する変化対応力を備えるため方針を転換し、セルフサービス対応、グローバル標準化を前提としたサービス企画に取り組み始めている。近年相次いでリリースされる格安スマホサービスは、まさにその一例と言えるだろう。