あらゆる産業でデジタル化が進むなか、通信ネットワークのトラブルがビジネスに及ぼす影響はかつてないほど大きくなっている。どんな企業・組織においても、今や、ネットワーク障害の解析と原因特定を迅速に行う能力は欠かせない。
このトラブルシューティングで活躍するのがパケットキャプチャだ。ネットワークを流れるパケットを捉え、保存し、解析可能なデータに翻訳・表示するソリューションである。
通信事業者や官公庁、金融機関等に対して、このパケットキャプチャの提供とサポートを長年続けてきたのが東陽テクニカだ。1980年代に海外製品の取扱を開始し、2000年代以降は自社開発の「SYNESIS」等で、要求レベルが極めて高い日本企業・政府機関のニーズに応えてきた。
そして2021年にはパケットキャプチャ技術をベースとして、ネットワークの利用状況やセキュリティリスクを可視化・解析する新製品「NetEyez」「NetEyez Security」をリリース。ネットワーク技術に精通していない一般企業の管理者にも使いやすいソリューションを提供している。
ネットワークの活用範囲の拡大とトラフィックの急増により、ネットワーク可視化・解析のニーズは多様化している。東陽テクニカは特徴の異なる3製品を使い分けることで、これに対応している。
2015年の発売開始から通信事業者等の支持を集めてきたのが、キャプチャ機能の高性能化・高度化を追求したSYNESISだ。情報通信システムソリューション部 係長の内田武夫氏によれば、最大の売りは、「大容量トラフィックを1パケットも取りこぼさない安定性」。世界で初めて100GbE(※1)のパケットをフルレートで連続キャプチャできる製品として発売し、2019年には200Gbps(※2)対応モデルも市場投入した。機能面で特徴的なのはフィルタ・スライス機能だ(図表1)。特定のパケットだけ、あるいはIPヘッダの一部分だけを取り込むことで、「ストレージ容量を節約でき、かつ、データを絞り込んで解析するのに有効だ」(同氏)。
図表1 SYNESISのフィルタ・スライス機能
トラブル調査時の検索も速い。パケットにインデックスを付けて保存するため、膨大なキャプチャデータから必要な情報を高速に取り出せる。キャプチャを実行しながらリアルタイムにパケットを抽出し、統計・解析情報を表示することも可能だ。
もう1つ見逃せないのが「パケットリプレイヤー」機能である。通信事業者からの要望で開発したもので、商環境で取り込んだパケットを抽出し、検証ネットワークに流し込んで再現する。検証環境で障害を再現して原因を解析するのに役立つ。
これらの特徴を持つSYNESISは、常時監視に適したラックマウント型と、トラブル発生場所に持ち運んで使えるポータブル型(下写真)を目的に応じて選択できる。トラブルシューティング以外の用途での導入も増えており、金融機関等では大容量ストレージを備えたラックマウント型を「セキュリティインシデントが発生した時に後で見直すための証跡データとしてパケットを保存するのに活用されている」(内田氏)。