5Gサービスを展開する世界中の通信事業者で一大トレンドとなっているRAN(無線アクセスネットワーク)の仮想化とオープン化。これを4Gから商用展開しているのが楽天モバイルだ。
すべての4G/5G基地局で「仮想化Open RAN」を採用する同社は、セル構成や設置環境に応じて様々なベンダーの無線機(RU:Radio Unit)が使えるメリットを活かしてネットワークを低コストかつスピーディに構築。6ベンダー(2022年11月時点)のRUを使い分け、すでに30万セルを商用展開している。4年弱で4G人口カバー率98.0%※(2022年10月末時点)を達成するうえで、仮想化Open RANが果たした役割は大きいと、品質保証プラットホーム本部 QAマルチアクセス部長の朽津光広氏は語る。
「コストを抑えつつ早期に通信網を立ち上げ、さらに5Gへの移行も加味してネットワークを展開しなければならないというのが、参入当時の我々の状況だった。レガシーなやり方では、世代が代わるごとにリプレースが必要になるが、我々にはその時間もない。そこで、当初から新世代のネットワークを構成した」
RAN製品の市場は長らく寡占状態が続き、従来は限られたベンダーの専用機器を使うしかなかったが、仮想化Open RANの登場で状況は変わった。
仮想化の導入によりハードウェアとソフトウェアが分離され、汎用サーバー上でRANの制御部であるDU(Distributed Unit)とCU(Central Unit)のソフトウェアを動かせるようになった。設備投資/運用コストが低下し、ハードウェア選択の幅も広がる。さらに、「次世代への移行が迅速に行える。半導体不足でハードウェアの調達が困難になっても、4Gで導入したサーバーを5Gで使える」(同氏)。6G移行時にも同様の効果が期待できよう。
オープン化も製品選択の幅を広げ、コスト最適化の効果をもたらす。DU/CUとRUのマルチベンダー構成が可能になり、「寡占状態の縛りから脱却できた」。RANの仮想化・オープン化を推進するO-RAN ALLIANCEの仕様に準拠するDU/CUを自社開発し、図表1のようにマクロセルやスモールセル、屋内・屋外と用途に応じて最適なRUと組み合わせて5Gネットワークを展開している。RUも調達の幅が広がり、半導体不足によるリスクを軽減できている。
図表1 250人のオペレーションにより30万セルを展開(2022年9月時点)
仮想化Open RANはこうしたメリットをもたらすが、それを活かすには解決すべき課題もある。RU/DU/CUをマルチベンダー化すれば、これまでベンダーが担保していた各コンポーネントの評価、相互接続性の検証・確認等を通信事業者が自ら行わなければならない。従来の専用装置とは異なり、DU/CUがクラウド基盤上で適切に動作するかの検証も必要だ。