コンピューティングもストレージも、さらにはさまざまなアプリケーションも、クラウド事業者が提供する基盤の上で「サービス」として利用するのが当たり前の時代となってきた。クラウドという、スケーラブルでオンデマンド、セルフサービスという特徴を兼ね備えた基盤の上に実装されることにより、かつてのように、入念にサイジングを行った上でハードウェアを発注し、機器の到着を待ってから設定を投入し……といった時間と手間をかけることなく、ビジネス上の要請や市場の変化に合わせてすぐに拡張できる時代が到来している。
一方で、それらをつなぐネットワークとなると、他のリソースの拡張性・柔軟性に追いついていない状況だ。クラウド内部のネットワークパフォーマンスまで含めて事業者が責任を持つSaaSならばともかく、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)といったIaaSの場合、システムをクラウド上に移行したのはいいが、企業とクラウドの接続、あるいはクラウド内の異なるリージョン間の接続を担うネットワークのどこかでボトルネックが生じてしまうケースが多い。
ましてや、オンプレミスとIaaSを組み合わせたハイブリッドクラウド環境や、用途・特徴に合わせて適材適所で複数のクラウドサービスを組み合わせたマルチクラウド環境となると、問題はさらに複雑だ。リソースの拡張に合わせて高パフォーマンスを享受したくても、ネットワーク部分がボトルネックになってままならない状況が発生し始めている。
確かに日本企業ではまだ、「クラウド上のリソースを結ぶネットワークの拡張性をどう確保し、どう柔軟に活用するか」は、顕在化していない課題かもしれない。だが確実にクラウド移行が進み、ハイブリッドクラウド最適解の模索が続く中では、いずれ避けられなくなるだろう。
そんな状況に一足先に直面した米国で注目されているのが、マルチクラウドネットワーキングソフトウェア(MCNS)というアプローチだ。Network as a Service(NaaS)とも呼ばれる。MCNS/NaaSがどのような仕組みなのか、企業ネットワークの現状を確認しながら見ていこう。