日本発のIoT無線規格、Wi-SUNの最新動向を紹介するイベント「Wi-SUN Open House 2023」(主催:Wi-SUNアライアンス)が2023年3月22日に開催された。
Wi-SUN Open Houseは2012年以降、Wi-SUNの推進組織であるWi-SUNアライアンスが中心となって、IoTに関心を持つ幅広い層を対象に開催している。今回は、国内外の関係者による12のセッションが行われた。
基調講演に登壇したのは、Wi-SUNアライアンス プレジデント&CEOのフィル・ビーチャー氏だ。
Wi-SUNアライアンスは拡大を続けており、メンバー企業は46カ国300社以上にのぼる。「当初は8社でスタートしたが、今やシリコンベンダーから端末ベンダーまで幅広いメンバーが集まっている。米調査会社Navigant Researchによると、Wi-SUN対応エンドデバイスも世界中で1億2000万台以上が展開されている」。ビーチャー氏はこのようにWi-SUNの現状を説明した。
IEEE 802.15.4gとして標準化されたWi-SUNは、IEEE 802.15.4gを最下層のプロトコルベースとし、上位層はアプリケーションに応じてプロファイルを決めることができる。このプロファイルの作成や相互接続性を確保するための認証試験の実施などをWi-SUNアライアンスが担っている。
Wi-SUNプロファイルのうち、スマートシティやスマートユーティリティネットワークなどを想定したFAN(Field Area Network)の最新版となる1.1は、認証を終えたばかりだ。OFDMに対応したIEEE802.15.4xをサポートし、最大伝送レートが1.0の300kbpsから2.4Mbpsへと大幅に高速化した。また、低消費電力でバッテリー駆動デバイスをサポートすることから、「水道やガスメーターの検針に適している」とビーチャー氏は語った。
一方、HEMS用プロファイルのWi-SUN HANは、東京電力をはじめ、電力各社のスマートメーターとHEMS機器間の接続インターフェース(Bルート)通信に採用されているが、「スマート農業やビル監視などにも用途が広がっている」という。
続いて、シスコシステムズ Cisco IoT Standards ManagerのGary Stuebing氏とCisco Industrial IoT GroupのPaul Duffy氏が、同社のWi-SUNの取り組みについて講演した。
シスコは、Wi-SUN FANに対応したソリューション「Cisco Resilient Mesh」を提供している。「当社は、FAN1.0の認定を受けた完全なエンド・ツー・エンドのメッシュ製品ポートフォリオを持つ最初のベンダー」とDuffy氏はアピールした。
Wi-SUN FANに対応した新しい製品の1つに、ボーダールーター「IR8140」がある。
これは、メッシュ内の数千台のデバイスを調整し、セキュリティメカニズムや鍵の配布など、メッシュ構造全般を管理するルーターだ。「非常に頑丈な筐体で、電柱などの屋外に設置され、極端な暑さや寒さといった過酷な環境での使用にも耐えることができる」という。
シスコでは、部品表や回路図、ソフトウェアスタックを提供するキット「Resilient Mesh Reference Design」も展開しており、電気やガス、水道メーター、街灯システムなどにWi-SUN FANを活用する多くのパートナーに利用されている。
また、付加価値製品として、デバイスの安全な登録やコンフィギュレーションの監視、デバイスの異常状態の警告などをサポートする「Cisco Field Network Director(以下、FND)」を提供しているが、FNDのベースとなっているのが、シスコが制約のあるネットワーク向けに特別に設計した管理プロトコル「CoAP Simple Management Protocol」だ。シスコでは、このテクノロジーをオープン化するほか、オープンソースのデバイス・エージェントを2023年後半にリリースを予定している。