2万人動員のVRホラー「戦慄迷宮:迷」を成功に導いた “適応型ローミングアシスト”とは?

(左から)ABAL 代表取締役 尾小山良哉氏、プログラマー 鈴木祥太氏、
キャンパスクリエイト 専務取締役 オープンイノベーション推進部 プロデューサー 須藤慎氏

東京タワーで2万人以上を動員し、大きな話題を呼んだVRホラーアトラクション「戦慄迷宮:迷」。富士急ハイランドの人気施設「戦慄迷宮」を原案とするこのコンテンツは、400㎡の物理空間に8階建て・全長約1kmのバーチャル迷宮を構築し、最大100人が同時にアバターとして参加できる。この画期的な体験を支えているのが、ABALが開発したXRプラットフォーム「Scape」と、ヤマハ製Wi-Fi 6Eアクセスポイント(WLX323)に実装されている適応型ローミングアシスト機能だ。

ABALは、ロケーションベースXRエンターテインメントに強みを持ち、500㎡の現実空間を20倍の1万㎡、理論上は無限に拡張できる独自の空間拡張技術で18件の関連特許を保有している。東京都の「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業」の開発プロモーターに令和5年度に採択されたキャンパスクリエイトの支援を受けて開発を進めており、XR技術を活用したアトラクションにおいて国内最多の導入実績がある。

ABALのXRプラットフォーム「Scape」は500㎡の現実空間を無限に拡張できる

VR体験を支えるネットワーク要件

VR体験を大きく左右する要素の1つはネットワークだ。ABAL プログラマーの鈴木祥太氏は次のように語る。

「私たちのシステムでは、参加者全員の位置データや行動データをリアルタイムにサーバー経由で相互に送り合っています。VRゴーグルを装着した参加者がバーチャル空間内を自由に移動する際、複数のアクセスポイント(AP)間をシームレスにローミングできることが重要です」

そこで同社は、複数メーカーのAPを比較検証したが、その結果、WLX323の「適応型ローミングアシスト」機能に注目したという。移動した際に電波強度の弱い遠くのAPに接続し続ける、いわゆるスティッキー端末をAP側から切断し、最適な無線APへとローミングする機能だ。従来、APを切り替える際の条件を管理者が決定するのは難しかったが、これを現場の環境に応じて自動調整する機能を開発。これにより、現場の電波環境をリアルタイムで監視し、VRゴーグルが最適なAPに接続を自動的に切り替えることができる。実際の運用では、参加者がVR空間内を自由に移動しても、システムが自動的に最適なAPへ接続を切り替えるため、体験者側は接続の切り替わりを意識することなくシームレスな体験ができる。管理者側も複雑な設定作業が不要なため、運用中の負担を大幅に軽減できた。

また、こうした大規模なVR体験を支えるネットワークには、「通信速度が速いだけでは不十分です。複数の参加者がリアルタイムで体験を共有するため、通信の安定性が極めて大切です」とABAL 代表取締役の尾小山良哉氏は強調する。特に、鍵を握るのが、ジッター(遅延時間の揺らぎ)の軽減だ。参加者ごとにネットワーク遅延のバラつきが生じるとVR空間内での体験にもズレが生じ、同じ場所にいるはずの他の参加者の動きがカクついたり、タイミングがずれたりしてしまうからである。

ヤマハ製Wi-6E対応AP(WLX323)はこのジッター軽減と安定性という条件を満たしている。適応型ローミングアシスト機能によって、環境に応じて最適なタイミングで接続を切り替え、また、2.4GHz帯は使用せずに5GHz帯と6GHz帯での通信によって、安定した通信状態を実現しているためだ。ABALでは東京タワーでの「戦慄迷宮:迷」に続き、大阪のひらかたパークでも、同アトラクションを展開。同施設では、700㎡のエリアをAP5台でカバーしており、参加者が移動しても途切れないVR体験を実現している。

「以前はWi-Fi 5を使用していましたが、同時接続数は20人程度が限界でした。適応型ローミングアシスト機能を活用することで50人、システムとしては最大100人の同時体験が可能になりました」(鈴木氏)

戦慄迷宮:迷の体験の様子

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