3つの通信方式で自動運転・隊列走行BRT ソフトバンクとJR西が公道での実証実験へ

利用者の減少や運転手の担い手不足などにより、衰退傾向にあるローカル線の代替交通手段として、BRT(バス高速輸送システム)が注目を集めている。

BRTは鉄道の線路と同様、一般車が走行しないバス専用道を走行するため、定時性・速達性を確保できる。鉄道に比べ、運営コストも安価に抑えることも可能だ。東日本大震災により線路が流失したJR気仙沼線・大船渡線にこのBRTが導入されたことは、記憶に新しい。

ソフトバンクとJR西日本は、2021年から滋賀県野洲市の専用テストコースにおいて、将来のBRTの社会実装を見据え、連節バスの自動運転や異なる車種の隊列走行などの実証実験を行ってきた。2年弱の実証実験の間、延べ14000kmの試験走行を実施したという。

「自動運転と隊列走行に向けた実証は完了した」。ソフトバンク 代表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏は、2023年9月15日に開催された記者会見にてこう話した。

(左から)JR西日本 代表取締役副社長兼執行役員 鉄道本部長 中村圭二郎氏、ソフトバンク 代表取締役社長執行役員兼CEO 宮川潤一氏

(左から)JR西日本 代表取締役副社長兼執行役員 鉄道本部長 中村圭二郎氏、
ソフトバンク 代表取締役社長執行役員兼CEO 宮川潤一氏

自動運転と隊列走行の安定かつ確実な運用のためには、通信の冗長化が必要不可欠だが、両社は主に3つの通信方式を用いて冗長化の実証を行ったという。具体的には、5G基地局を介して通信を行う「V2N2V(Vehicle to Network to Vehicle)」、ミリ波を活用した車車間通信「V2V(Vehicle to Vehicle)」、光無線通信だ。

V2N2V通信では、ソフトバンクの5G SA対応端末を利用し、低遅延・スループット改善を実現。LTEと比べ、遅延時間は約3分の2倍に短縮、スループットは約1.7倍にまで向上したという。

遅延時間は約3分の2倍に短縮、スループットは約1.7倍にまで向上

遅延時間は約3分の2倍に短縮、スループットは約1.7倍にまで向上

V2V通信においては、バス同士の車間距離が短いため、路面からの強い反射波による電波干渉が発生するという問題があった。そこで2本のアンテナで受信電波レベルを安定化させるソフトバンクの特許技術「アンテナダイバーシティ技術」を活用。通信断の回数削減に寄与することを確認できたという。

通信断の回数削減に寄与

通信断の回数削減に寄与

光無線通信はミリ波より高い周波数を使用するため、大容量かつ低遅延な通信を可能にするが、一方で直進性が高く、移動体の向きが少しでもずれると通信に影響を及ぼすという問題もある。この問題を解消するため、移動体同士の双方向トラッキング技術を活用し、車車間におけるトラッキング制御を検証。カーブ走行時のブレを制御でき、遅延時間も5Gの約5分の1にまで短縮できたという。

遅延時間も5Gの約5分の1にまで短縮

遅延時間も5Gの約5分の1にまで短縮
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