デル、「水冷元年」を総括 AI時代のデータセンター冷却に新潮流

デル・テクノロジーズ 執行役員 インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 製品本部 本部長の上原宏氏

デル・テクノロジーズは2025年12月18日、プライベートイベント「DLC Servers & Datacenter Summit 2025(DSDS25)」を開催した。シュナイダーエレクトリックや日本郵船など多様な分野の企業が集まり、データセンターの水冷対応サーバーの最新動向や水冷技術の未来について紹介された。

デル・テクノロジーズ 執行役員の上原宏氏は、今年に同社が開催した水冷関連イベントの取り組みを振り返りながら、「GPUサーバーへの依存度は高まっているが、最大の課題は熱対策。従来の空冷では対応が難しく、液体冷却への移行は避けられない」とデータセンターの冷却方式が空冷から液体冷却へと本格移行が始まった「水冷元年」を総括した。

また、「新しい生態系」の構築が必要であることを強調し、「従来のサーバー提供とは異なり、データセンター事業者、設備メーカー、場合によっては建設段階から水冷対応を考慮する必要がある。新しいパートナーとの協力が不可欠になった」と述べ、サーバーベンダーだけでなく、冷却設備や建設事業者を含めた業界横断的な取り組みが求められていることを説明した。

液体冷却だけでは不十分、空冷との併用も

シュナイダーエレクトリック セキュアパワー バイスプレジデントの八木障貴氏

シュナイダーエレクトリック セキュアパワー バイスプレジデントの八木彰貴氏は、AIデータセンターのGPU発熱量がこの4年で約4倍に増加している現状を説明した。

同社ではこうした高発熱化に対応するため、液体冷却専業メーカーのMotivairを買収し、チップを直接冷やすDLC(Direct Liquid Cooling:直接液冷)方式から、冷却水の管理、外気への排熱まで、一貫して対応できる体制を整えたという。

ただし、八木氏は「DLC方式では70〜90%の熱を液体で除去できるが、メモリなどの残り10〜30%の熱除去には空冷が必要だ」と液体冷却だけでは完結しないことを指摘。例えば、130kWのラック1台あたり、10〜40kWの空冷設備を併用する必要があり、「液体冷却の普及とともに、空冷需要も伸びている」ことを述べた。

日本郵船の「洋上データセンター」、2027年の商用化を目指す

日本郵船 イノベーション推進グループ 先端事業・宇宙事業開発チーム 課長代理の大東鷹翔氏(左)と課長代理の森福将之氏(右)

日本郵船 イノベーション推進グループ 課長代理の大東鷹翔氏と森福将之氏は、「洋上データセンター」の構想を紹介した。

同社がデータセンター市場に参入する理由について大東氏は、「外航海運市場に比べ、データセンター市場の方が大きく、成長速度も速い」と説明。その上で、世界800隻以上の船舶運航で培った海水冷却のノウハウ、船舶での自家発電・オフグリッド運用の経験、浮体構造物の運用管理能力、世界2位のLNG船の保有実績など、日本郵船ならではの強みを活かせると強調した。

現在は横浜市の大さん橋客船ターミナル先でアジア初の浮体式データセンターを構築中。実証実験施設として2026年3〜4月の稼働を予定しており、2027年には商用化を目指すという。

また、森福氏は長期的な展望として「Ocean DC」構想を語った。洋上風力発電の近くに設置し、ゼロエミッションのデータセンターを沖合に大規模展開する計画だ。「船舶運航で培った技術を起点に、水冷時代の新しいデータセンターを業界の皆さまと共に作っていきたい」と森福氏は述べ、協業への期待を示した。

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