
――防衛産業の最新動向について教えてください。
原田 欧米では、スタートアップの新規参入が目覚ましいです。数年前にできたばかりのスタートアップが、マイクロソフトやロッキード・マーティンといった大手プライム企業を押しのけて契約を獲得している状況です。
日本に限らず、防衛産業というと、大手プライムの下に中小企業やスタートアップがぶら下がるというピラミッド構造をイメージされる方が多いと思います。しかし、海外では必ずしもそうではありません。
戦闘機や戦車といった伝統的な正面装備については、今も大手プライムを中心としたピラミッド構造が強固ですが、AI・宇宙・サイバーといった新領域については、スタートアップが軍と直接契約するケースが増えています。
AndurilやPalantir Technologiesなど、防衛テックの大手スタートアップ6社を「SHARPE」と呼びますが、こうした大手スタートアップは企業規模もすでに大手プライム並みです。
――SHARPEは、GAFAMの防衛テック版のようなものですね。
小松 AI指揮・統制ソフトウェアを提供しているAndurilは、VRヘッドセット「Oculus」を開発したOculusVRの創業者が設立した会社です。
――ウクライナ戦争では、ドローンが主力武器の1つとなりました。
小松 米国の最新型の攻撃無人機「MQ-9リーパー」は40億円以上しますが、15万円程度のドローンで同じような攻撃力を実現できることを、ウクライナ軍は証明しました。そして今は、数千機のドローンを知能を持った鳥のように組織的に運用する「スウォーム(群れ)攻撃」の方向へ向かっています。
米軍はこれを「リプリケーター計画」と呼んでいますが、数千機のドローンが双方向のデータリンクでつながり、ある目標を破壊すると他のドローンは別の目標に向かったり、連隊長を顔認識して倒すまで攻撃を繰り返すといった研究が進められています。
――Starlinkにも注目が集まりました。
小松 通信波を強力な電磁波で妨害する電子戦が、現代の常識となっています。しかし電磁波は減衰するため、地上の目標は封じることができても、宇宙領域の電波まではなかなか妨害できません。加えてStarlinkの場合、現時点で約1万基(最終目標4万2000基)もの衛星がありますから、あのネットワーク全体を潰すことは物理的にほぼ不可能です。
米軍とSpaceXは、「Starshield」という新たな計画に取り組んでいます。既存のSpaceXの衛星を用いながら、暗号アルゴリズムなどはカスタマイズした、米軍独自バージョンのStarlinkです。
原田 ウクライナの国防産業協会に話を聞いたことがありますが、彼らは「戦場の最前線のニーズを受けて、2週間でドローンのシステムを更新している」と言っていました。また、米国で開催されている「SOF Week」という特殊部隊コミュニティの国際展示会を取材した際には、「特殊部隊と一緒にビジネスをやろう」といった標語を、会場内の至るところで見ました。軍と民が一体になってイノベーションのサイクルを回しているというのが、今のトレンドの1つです。