
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) 理事長の大野英男氏が2026年6月19日、「未来の社会基盤を創るイノベーションプラットフォームNICT」をテーマに、自社イベント「NICTオープンハウス2026」で講演した。
大野氏はまず、「交通、エネルギー、金融、医療、物流、行政、社会のあらゆる活動が情報通信によって支えられている。情報通信基盤がそのまま国力や国の安全保障にも直結している」と情報通信技術が個別分野ではなく「社会基盤そのもの」になっていることを説明した。
一方で、世界各国がこの分野への投資を急速に拡大させているのに対し、日本は少子高齢化や労働力不足という構造的な課題を抱えており、「現状維持ですら容易ではない」と危機感を示した。日本が競争力を維持し発展するためには継続的な研究開発と人材育成が不可欠だという。
さらに、AI基盤や通信ネットワーク、サイバー防御などを海外に依存すれば「社会や経済は大きな脆弱性を抱える」と指摘。重要技術を自国で持つ「自立性」と、世界から必要とされる技術力を持つことで国際社会において不可欠な存在になる「不可欠性」、この両方を確保することが課題だと述べた。
こうした状況を踏まえ、NICTは2026年4月から第6期中長期計画を開始。AI、Beyond 5G、量子ICT、サイバーセキュリティの4分野を「戦略4領域」と位置づけ、研究開発と企業や大学への研究資金の助成(ファンディング)の両面から発展させていく方針だという。大野氏は「研究成果を論文や発表という点で終わらせることなく、社会価値に結びつけることが重要になってきた。研究開発・公共サービス・ファンディングを組み合わせて活用し、研究成果を社会実装へとつなげるイノベーションプラットフォームへ役割を広げていく」と話した。
例えばAI領域では、AIが社会で活用されるには、AIと人との間で信頼できる情報がやりとりされる環境が必要だと強調。NICTが2011年から開発を進めてきたWeb情報分析システム「Wisdom X」の研究過程で蓄積した700億ページ超のWebデータと、そこから作成した40TB超の日本語学習データを使い、新しく登場するLLM(大規模言語モデル)の回答が適切かどうかを自動で判断する「能動的評価基盤」の開発を進めていることを紹介した。
