「AIリスク、何をどこまで対応すべきか」ガートナー礒田氏が示す実践論

「事前チェックゼロの状態から、わずか2時間で本番のデータベースに到達された」――。

ガートナージャパン バイスプレジデントの礒田優一氏は、2026年3月にある企業の社内AIプラットフォーム(AIの開発・運用監視を行う基盤環境)が攻撃者のAIエージェントにハッキングされ、あっという間に機密情報への侵入を許した事案を紹介した。AIの進化スピードとユースケースの拡大を背景に、AIリスク環境は想像を超えるペースで複雑化しつつある。

ガートナージャパン バイス プレジデント チーム マネージャーの礒田優一氏

ガートナージャパン バイス プレジデント チーム マネージャーの礒田優一氏

2022年11月のChatGPT登場から4年近くが経過し、生成AIは企業に急速に浸透した。そして今、企業の関心はAIエージェントへと重心を移しつつある。

ガートナーにもこれに関連する問い合わせが急増しており、礒田氏は直近1年間に寄せられた問い合わせを分析し、AIリスクへの対応を次の3つの領域に整理した。まず、「全社/経営向けのガバナンス体制やポリシー」を整えることが先決であり、その土台の上に、「従業員向けのリスク対応実務」「自社AIアプリケーション開発者向けのリスク対応実務」を進めるべきという考え方を示した。

生成AIのリスク対応 ―― 情報の線引きが焦点に

従業員向けのポリシーやガイドラインについては、「せっかく文書化したけど誰も見ない」「気づけば形骸化していた」という悩みを抱える企業が多いという。礒田氏は、利用を許可するサービスを明示し、それ以外は申請制とするシンプルな運用法を紹介した。

問い合わせが特に多い機密情報の取り扱いについては、公開情報・内部情報・機密情報・極秘情報の4段階に分類したうえで、個人情報とNDA(秘密保持契約)情報について慎重な取り扱いが必要と強調した。

機密情報の取り扱いにおける留意点

個人情報がAIに学習されれば、その時点でコントロールが利かなくなるため、プライバシーは原則禁止という判断が現実的だという。NDA情報についても、目的外利用が契約で禁止されているため、同様の慎重さが求められる。

一方、営業秘密情報は自社の損失にとどまる性質のため、各社の判断で積極的に活用が進んでいる状況にあるという。この線引きの違いこそが、ポリシー設計の勘所と言えよう。

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