低価格と導入の簡便性を実現　UL:DL比をプルダウンで選べるFJSRSは基地局装置（gNodeB）と端末（UE）のペアで提供される。UEを1つに限定することで、コア機能の負荷を低減してコアサーバーを不要とし、通信に必要な最低限の機能を搭載したgNodeBとUEのみで運用できるシステムを実現した。これを「弊社がコンサルを行っている企業に対し、免許取得費用込みで、490万円で提供する」（植田氏）という。

同様のシステムを既存の5G機器で組むと、最も安価なものでも2000万円以上費用がかかるというから、490万円は「破格」の値付けといえる。

スリーダブリューでは、この価格を実現できた理由として2点間通信に限定し、機能を絞り込んだことを挙げる。植田氏曰く、「使用デバイスを増やしたければイーサネットにHUBを入れるだけです」

もう1つ、FJSRSの大きな特徴となるのが、導入の簡便さである。「イーサネットポートにLANを接続して、電源を入れるだけで通信が可能になる」（植田氏）。

無線LAN機器では一般的となっているPlug＆Playをローカル5Gで実現したのだ。これにより、「複雑な設定が必要な既存の製品と一線を画し、FJSRSはローカル5Gをただの“土管”として買ったその日から利用できます」。

そのほか、FJSRSを利用するメリットとして挙げられるのが、「上り」「下り」の通信速度の比率をGUIで手軽に変更できる点だ。

5G無線機には、設定変更を行うためにベンダーによるプロファイルの書き換えが必要なものも少なくないが、FJSRSならユーザーが自ら簡単に設定をいじれる。

FJSRSは「上り」の比率を最大限に高めることで8Kの映像伝送にも十分に対応できる。「下り」の比率を高めることで、高画質映像の配信といった用途にも活用できる。

注目すべきはL5Gじゃない　L5Gで何をするかだスリーダブリューでは、FJSRS装置を使って、本社に5Gの検証環境を整備、農業や養殖事業を想定したトライアルを進めている。

実験では、①金魚を養殖している水槽や野菜を育ている畑の状況を4Kカメラで撮影する、②センサーで水槽の濁り・酸素濃度・CO2濃度などの環境データと、気温・湿度・風速・雨量などの気象データを短距離無線で集約、③ローカル5Gを用いてこれらをサーバーに送り遠隔でモニターしており、これらのデータにより、散水・排水・餌やりをリモート制御で行えるようにしている。

育てるのが難しいとされている金魚の王様「らんちゅう」も産卵・成育に成功。現在11の水槽に250匹以上の金魚が飼育されている。今年から販売も計画中

遠隔灌水システムによる畑モデル。データ量の少ないセンサーはソーラーを利用した無給電LPWAを使用して５G回線までつなぎ、土壌の温度や水分量などを管理して旬の野菜・果物を成育・収穫している

様々なセンサーから1分おきにデータが上がってくる

一昨年から取り組んでいるこの実験では100匹以上の幼魚が生まれ、すくすく育っている。

なぜコンサルティング企業が自ら実験の場を設けているかというと「ローカル5Gが普及するためには“ある程度汎用な”ユースケースをたくさん開拓する必要があると思います。なぜなら、無線の特性上どのケースにも適応できるシステムは存在し得ないからです。各企業は、その“ある程度”を自社に合わせてアレンジするところにこそ注力すべきだと考えています。ですから、その“ある程度”の場を作るところまでは提供できるようにしようと考えました。」と植田氏は答える。

安価な5G無線装置FJSRSの登場で、多用な分野でユースケースの開拓が進めば、ローカル5G普及が一気に加速することになるはずだ。

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