業種、企業規模にかかわらず、様々なビジネスの現場でWi-Fiの存在が当たり前となっている。IDC Japanの調査によれば、2018年は国内企業向けネットワーク機器市場の中でも、特に企業向け無線LAN機器市場が大きく成長。アクセスポイントの出荷台数は81万台、無線コントローラーを含めた市場規模は前年から24.8%増加したという。

スモールビジネスも例外ではない。飲食店、小売店ではタブレットによる注文システムや業務用スマホの利用が増加している。NTT 東日本 第三部門 IoTサービス推進担当 担当課長 楢村幸寛氏によれば、「キャッシュレス端末の導入が盛んになっており、小規模店舗でもWi-Fi環境を整備したいという要求がこの1年ぐらいで増えてきた」という。

また、ホテルや飲食店ではインバウンド観光客などの集客のため、フリーWi-Fiの設置は必須となっている。ジムや美容室、クリニックなどでも導入が進む。ICT総研によれば、2018年度の公衆無線LANサービス利用者数は前年比14%増の5746万人（図表1）。今後も年々増加する予測だ。スマホの利用料金を抑えるために低価格・小容量のプランを選択するユーザーが増えた結果、フリーWi-Fiの利用ニーズが高まっていると同社は見ている。

図表1　公衆無線LANサービス利用者数予測

では、スモールビジネスの現場にWi-Fiを整備するにあたっては、どのようなソリューションが求められているのだろうか。

プロに任せるか、自分で簡単管理かまずスモールビジネスの課題として挙げられるのが、IT管理者がいない場合が多いこと、いたとしても担当者のリテラシーが高くないことやリソースが割けないことだ。そこで各社は、導入から運用保守までを請け負うサービスを展開、強化している。

アライドテレシスもその1社だ。「当社はもともとメーカーとしてネットワーク機器を提供してきたが、お客様の要望を受け、近年はサービス面も強化している」とビジネスエンジニアリング本部 ServiceDevOps部 部長の中村徹氏は説明する。例えば中小規模向けのサービス「Net.AMFライト」では、ネットワーク管理機能と24時間365日対応の遠隔保守サービスをセットで提供、オプションで初期キッティングサービスも付けられる。

NTT東日本は、導入から運用保守を一貫して請け負う「ギガらくWi-Fi」を展開している。「まさにIT管理者がいないところ、詳しくない方をメインターゲットに企画している。“手離れ”の良さが売りだ」（楢村氏）

導入段階では、「予め設定済みのアクセスポイントをお送りするので、それを繋ぐだけ。特にご希望があれば取り付け工事も対応できる」。運用保守についても、「トラブル発生時にお客様は一切機器の設定などを見る必要がなく、電話をいただければ弊社で診断・解消する」という。

反対に、ユーザー自身で簡単に設定できるように設計しているWi-Fiソリューションもある。代表的なのが、シスコシステムズのアクセスポイント「Meraki Go」だ。25名以下、単一拠点の企業をターゲットにしており、Amazonでのみ販売している。スマホアプリだけで誰でも簡単に設定、運用できるように徹底的に作り込んだという。

図表2　Meraki Goの設定イメージ

届いたアクセスポイントの裏面にあるQRコードをアプリから読み込むとハードウェアの登録が完了、あとはSSIDの命名やゲストネットワークが必要かの選択だけで設定が完了する（図表2）。運用面でも、直感的なUIでアプリ単位のトラフィックを確認できるほか、アプリ使用率の設定や、パスワード入力不要でゲストWi-Fiに接続できるQRコード表示機能なども備える。

QRコードを読み込むだけでゲスト用Wi-Fiに接続できる（左）、
Wi-Fiの使用状況をアプリケーション単位で可視化。
アプリ単位の使用率制限もでき、例えば動画サイトを制限し、
業務用アプリが快適に使えるようにすることも可能だ（右）