ビジネスプロセス管理も融合
オーケストレータの役割を果たす製品としてIBMが開発したのが「Smarter Cloud Orchestrator（SCO）」だ。オーケストレータの開発においてはクラウドの制御・管理技術が重要な要素となるため、これまでクラウド事業で培ってきた技術力と知見が武器になる。
もう1つ、IBMが強みを発揮できる領域として糸井氏が強調するのが、ビジネスプロセス管理（BPM）とオーケストレータとの融合だ。
NFVによってキャリアインフラの仮想化を実現したとしても、それだけで通信事業者が新たなビジネスを行えるわけではない。サービス提供に必要な機能やリソースをどのように展開するのか、新たな仮想インフラをベースに行うサービスをどのように管理運用していくのかといったプロセスも確立しなければならない。そこで「我々がもともと持っているBPM製品をSCOに取り込み、プロセス化をより簡単にできる製品にしている」（同氏）。
このSCOを軸にNFVの提案を進めていくうえで、目下の課題となるのが技術者の育成だ。NFVには、IT/ネットワークの幅広い知識と技術が必要になる。日本IBMシステムズ・エンジニアリング、ISEネットワーク・システムズ IBM認定上級ITスペシャリストの板場幹夫氏は、「PoCや実証実験に参加しながら技術者に経験を積ませて育成している」と話す。
これは、NFVを手掛けるベンダーに共通の大きな課題と言えるが、「NFVに対するお客様の期待は大きく、そのメリットをなんとしても取り入れたいという強い意思を感じる」と、技術者の育成にさらに力を入れて取り組むという。
高品質サーバーとSDN/NFVも売り込む
こうしたIBMの動きと連携して、レノボもNFVビジネスの拡大に向けた動きを始める。
IBMはx86サーバー「System x」事業をレノボに譲渡し、IBMがPOWERプロセッサ等の特定用途向けサーバーに、レノボがx86サーバーに注力する新体制をスタートした。今回の事業譲渡を受けて10月1日に発足したレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ（LES）がIBMと連携して、クラウドインフラを構築するためのサーバーやネットワーク機器の販売に力を入れる。System xならびにNFVソリューションを売り込むのだ。
ビジネス開発部システム・ネットワーキング製品技術推進担当の牛尾愛誠氏は、「NFVを支えるキャリアグレードのインフラを提供する」と話す。
キャリアサービスを提供する基盤となるインフラには、一般的なクラウドサービスのインフラと比べて高い可用性・信頼性が求められる。そこで「IBMの中で培われてきたx86サーバーの技術と実績を活かす」という。レノボへの譲渡によって「IBM時代の信頼性を継承しながら、コスト競争力をさらに高める」と話すのは、システム・ネットワーキング製品グループリーダーの星雅貴氏だ。
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| レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ、ビジネス開発部システム・ネットワーキング製品技術推進担当の牛尾愛誠氏（左）と、システム・ネットワーキング製品グループリーダーの星雅貴氏 |
NFVに活かせる技術の一例が、System xの障害予知機能の活用である。サーバー内の各種部品に障害が発生する前にその予兆を検知し、予期しないサーバー停止を回避する機能だ。これとオーケストレータのSCOを連携させて、サービス継続性を向上させたり、リソース管理を効率化する。
一方、SDNに関しても、IBMと共同で開発するSDN対応スイッチとSDNコントローラを販売する。
IBMは、2011年から提供を始めたOpenFlow対応スイッチのラインナップを拡大してきており、また今年2月には、オーバーレイ方式とホップバイホップ方式のSDNを統合管理できるSDNコントローラ「IBM SDN VE」をリリースした。マルチベンダーのSDN対応スイッチに対応しており、様々なベンダー製品が混在するSDN環境を統合的に管理・制御することができる。LESはこれらの製品を販売し、SCOと連携するSDNソリューションを提供する。
