価値を生む「2つの要素」
正式イベント終了後、有志による意見交換会も実施した。日本のオタク・推し活文化を世界に発信するOshicoco代表取締役の多田夏帆氏、CPO/広報室長の岡田京依氏、マーケティングプランナーの布施希乃美氏、総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課 新世代移動通信システム推進室 係長の今井拓也氏にも飛び入り参加いただき、推し活やスポーツ観戦における新たな映像体験について議論を行った。ここで得られた示唆は、今回のイベントにおける大きな成果の1つである。
私は以前から、「熱量を持って応援する対象があるなら、それはすべて推し活ではないか」と考えている。アイドルだけではない。スポーツチームでもよい。選手でもよい。監督でもよい。マスコットでもよい。チアでもよい。対象は異なっても、「自分の見たいものを、自分の見たいタイミングで、できれば高画質で見たい」という本質的なニーズは共通している。

イベント後半には、5Gミリ波による4Kライブ配信を来場者も体感。
推し活領域に特化したリサーチ&コンサルティング事業を通して日本の
オタク・推し活文化を世界に発信するOshicoco CPO/広報室長の岡田京依氏も参加した
意見交換会では、推しだけを見続けたい、衣装やダンスの細部を見たい、双眼鏡でも限界がある、マスコットやチアも見たい、といった声が挙がった。また、韓国アイドル文化で広がる、特定メンバーを追い続ける映像、いわゆる「チッケム」のような体験にも需要があるという話題も出た。
ここで重要なのは、単に視点を増やせばよいわけではないという点である。見たいものを自由に選べること、そして、その映像が十分な画質であること。この2つが揃って初めて価値が生まれる。たとえ複数の視点を選べたとしても、画質が低ければ、衣装の細部、表情、ダンスの足元、ファンサ(ファンへのリアクション)の瞬間を十分に楽しむことは難しい。
ミリ波で「見たい」に応える
KDDIの井上氏からは、「高画質マルチアングルやアーカイブ、いわば『答え合わせ』としての視聴体験には大きな価値がある」とのコメントをいただいた。これは非常に示唆的である。

KDDI コア技術統括本部 ネットワーク開発本部
アドバンスド技術推進部 部長の井上義隆氏
リアルタイムで見るだけであれば、画質はある程度割り切れるかもしれない。しかし、後から推しの表情、衣装、ダンス、ファンサを見返すことを考えると、高画質で残っていること自体が価値になる。ライブ後に「あの瞬間、推しはどんな表情をしていたのか」「自分に向けられたと思ったファンサは本当にそうだったのか」を確認する、答え合わせの楽しみ方がある。
この観点に立つと、4K化はリアルタイム視聴体験の向上に加え、アーカイブ視聴や追加収益機会の創出にもつながる可能性がある。高画質な複数視点映像を残すことができれば、ライブ後や試合後にも楽しめるコンテンツとして販売できるかもしれない。ミリ波が支える大容量・低遅延通信はリアルタイム配信だけでなく、コンテンツ資産の価値向上にもつながる。
今回のイベントを通じて、4K低遅延ライブ配信そのものを実証できたことは大きな成果だった。しかし、それ以上に価値があったのは、「ユーザーは何を見たいのか」が具体的に見えてきたことである。
ミリ波で文化を発展させる。そのためには、技術だけではなく体験を作らなければならない。今回のイベントは、そのための第一歩になったと考えている。今後は、今回得られた知見を実際のスポーツ観戦や推し活イベントへ展開し、ミリ波ならではの体験価値創出につなげていきたい。














