ワイヤレス給電が変えるフィジカルAI開発 エイターリンクが示す「Real-to-Sim」の可能性

フィジカルAIの実用化には、ロボットや設備が現実世界を正確に把握するための多様なデータ取得が欠かせないが、センサー設置には電源や配線の制約がある。エイターリンクの彦坂氏は、7月31日に開催された「フィジカルAI開発Conference2026」に登壇。同社の長距離ワイヤレス給電技術「AirPlug」によって実現する新たなセンシングについて紹介。さらに、それにより取得した実環境データを用いた「Real-to-Sim」によるフィジカルAI開発の必要性を説いた。

ワイヤレス給電が可能にする多点センシングとその先のAI活用

一方で、彦坂氏は「センサーを増やしてデータを取得できるようにするだけでは十分ではない」と指摘した。「ハードウェアの役割は現実世界からデータを取得することだが、そのデータをAIやロボットが判断・制御に利用できる情報へ変換するのはソフトウェアの役割だ」からだ。

例として挙げたのが、ヒューマノイドロボットが物をつかむ動作である。決められた位置の物体をつかむだけであれば少数のセンサーでも対応できるが、人間のように対象物に応じて持ち方や力加減、接触位置を変えるには、手全体で触覚を捉える多点センシングが必要になる。

ワイヤレス給電の活用により、これまで設置が難しかった指先や関節部にもセンサーを配置しやすくなり、より多くの触覚データを取得できるようになるというが、多点で取得した圧力や振動のデータそのものが「触覚」になるわけではないと彦坂氏。

多数のセンサー値を「触覚」として意味のある情報に変換するプロセス

例えば、「どの指が最初に触れたか」「圧力分布がどの方向へ移動したか」といった時系列データを解析し、「物体がずれている」「滑り始めている」といった判断につなげる処理を経て、初めてAIが活用できる情報になるという。

こうした実環境のデータは、フィジカルAI開発で広く用いられる「Sim-to-Real」の課題解決にも役立つと彦坂氏は説明した。Sim-to-Realとは、シミュレーション上で学習したAIモデルを実環境へ適用する手法のことだが、「現実にはシミュレーションだけでは再現しきれない事象も少なくない」。

そこで彦坂氏は、実環境から継続的にデータを収集し、それをシミュレーションへ反映する「Real-to-Sim」の重要性を説いた。Sim-to-RealとReal-to-Simを循環させることで、AIモデルを継続的に改善し、フィジカルAIと現実世界とのギャップを埋めていくことが必要だという。

AirPlugによるSim-to-Realのギャップの埋め方

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