ブロードコム最新チップで対応
ESUNは今後、どのようにしてAIインフラへ導入されていくのか。
OCPのESUNワーキンググループは、2026年3月にOCP ESUN 1.0仕様を公開した。従来のイーサネット機器では対応できない処理を行うため、AIインフラへ導入・展開するには、ESUN対応のハードウェアが必要だ。具体的には、データセンター向けスイッチと、GPUサーバーに搭載するNICの対応が待たれる。
そこで注目されるのが、ネットワークチップを開発・提供するブロードコムの動きだ。
ESUNプロジェクトはもともと、ブロードコムが推進するイーサネットベースの技術「SUE(Scale Up Ethernet)」をOCPに提案したことを端緒としている。そのため、ブロードコムの対応は速い。「最新のネットワークチップでESUNのサポートがすでに始まっている。我々だけでなく、NICベンダーも製品開発を進めている」(兵頭氏)。
さらに、ESUNの仕様策定にはベンダーのほか、メタやマイクロソフト、OpenAIといった、巨大AIクラスターを構築・運用、利用する企業が参画している。「AIインフラを全面的にESUNへ移行するという強いメッセージまでは聞こえてこないものの、選択肢の1つとして、ESUNの実装を検討している」という。
AIネットワーク全体をイーサで
もう1つ、Ultra Ethernetとの棲み分け、補完関係も注目される。
冒頭で述べた通り、Ultra Ethernetはスケールアウト、ESUNはスケールアップと用途が明確に分かれており、競合の心配はない。加えて、ESUN仕様には、Ultra Ethernetのトランスポート規格(UET)で定義されたLLRを取り込むなど技術的な結びつきもある。今後、両規格のアップデートで関係性が深まる可能性もある。スケールアウトネットワークにおいては、InfiniBandとUETのシェアが逆転したとする調査結果もあり、これもESUN普及の後押しとなろう。
また、ESUNやUETで構築したネットワークでは、GPU間通信とフロントエンドの通信、つまり従来のIP通信が共存可能になることも見逃せない。
現在は図表1のように、用途や要件に応じて技術の異なる複数のネットワークを作り分け・使い分けているが、運用効率やコストの観点で見れば、望ましい形態とは言えない。AI学習用の大規模クラスターならば、GPU間通信だけに特化したネットワークが優先されようが、今後は、AI推論用に小規模なGPUリソースを分散展開するフェーズに入る。「同じファブリック上で、GPU通信とフロントエンドの通信を共存させたいというニーズが出てくるはずだ」と兵頭氏は予想する。これに応え得るのはイーサネットしかない。
UETに続くESUNの普及は、“AIネットワーク”全体をイーサネット技術で統一し、構築・運用の効率を高める新時代の幕開けとなるかもしれない。
[月刊テレコミュニケーション 2026年8月号の記事を再構成]










