映像伝送を中心に活用広がる
では、60GHz帯無線LANはどんな用途に使われているのか。有線では実現しづらい「無線ならでは」の柔軟性を活かしつつ、Wi-Fi等では難しい高速・大容量通信が求められる領域での活用が進んでいる。その中心となるのが映像伝送だ。
HCNET エンタープライズ技術本部 第二技術部 部長の川端啓介氏によれば、光ファイバーの代替手段として、大学や製造業が60GHz帯無線LANに熱視線を注いでいる。ある大学は、道路を挟んだ本館-別棟間を、Ceragon社のEtherHaul-600TXを用いて接続。光ファイバーを敷設することなく、高精細な画像・解析データなどを伝送できる通信環境を低コストかつ短期間で構築した(図表1)。
図表1 ある大学での導入事例

ある工場では、EtherHaul-600TXを活用して敷地内の建物間をつなぎ、監視カメラの映像をはじめとする大容量データの伝送を実現した。「工場内では、一度稼働してしまうと光ファイバーの敷設が難しい場合があり、代わりに60GHz帯無線LANを使いたいというニーズがある」(同氏)。
自治体やイベント会場でも、60GHz帯無線LANの活用が広がっている。新潟・長岡市が開催する「長岡まつり大花火大会」では、会場に設置したカメラと約1km離れたポールをハイテクインターのV3000で接続し、光回線経由で警備室へ映像を伝送。会場の安全確保や防犯対策に役立てている(図表2)。Wi-Fiを用いる場合と比べ、映像の乱れや通信の途切れを大幅に削減できることを確認した。
図表2 長岡まつり大花火大会での活用イメージ

別の自治体では、浸水・洪水のリスクが高いエリアに監視カメラを設置し、その映像をCeragon社のEtherHaul-600TXを用いて役所の監視センターに集約。防災対策として60GHz帯無線LANを活用している。「小中学校の周辺にカメラを配備し、防犯目的で60GHz帯無線LANを使いたいという相談もある」(理経の竹内氏)そうだ。
ある大規模イベントでは、スタジアムに設置したカメラの映像を、観客席側に整備したRADWIN社のTerraNetシリーズの親機に伝送する実証を実施(図表3)。有線の敷設が難しい会場でも大容量かつ高精細な映像を伝送できることに加え、ケーブルに制約されないダイナミックな映像撮影が可能になると期待されている。
図表3 あるスタジアムでの実証事例

出典:理経資料を基に編集部作成
AIとの連携も広がりつつある。例えば北海道・美瑛町は、有名観光スポットである「クリスマスツリーの木」周辺に設置したカメラの映像を、ハイテクインターのV1000を用いて数百m離れたポールへ伝送し、そこから光回線経由でクラウドへ送信。同社のAI分析クラウドサービス「VIXクラウド」で映像を解析し、クリスマスツリーの木周辺の私有地への不法侵入を検知すると、設置されたスピーカーから警告メッセージが流れる仕組みを構築した。
別の観光名所「白金青い池」では、V1000/V2000とVIXクラウドを組み合わせ、人流や駐車場の利用状況をリアルタイムに可視化。分析結果に基づく混雑状況を、現地のデジタルサイネージや美瑛町のホームページを通じて発信している。










