KDDIはネットワーク運用へのAI適用(AIOps)に積極的に取り組んできた。障害検知システムの運用に始まり、現在は障害の原因特定支援や平時の通信品質改善へと対象を広げている。目指すのは、AIツール導入による単なる省力化、効率化にとどまらない。6G時代を見据えた、通信事業者の業務プロセスそのものの再構築だ。
KDDIは2022年の大規模障害以降、障害を迅速に復旧するための技術開発に注力し、その一環としてAIの活用を進めてきた。
一方でこの数年、通信システムの仮想化も進んだ。音声通話やデータ通信、決済など基幹的なサービスが仮想化基盤上で動くようになるにつれ、不具合の影響範囲も広がっている。障害時には迅速な復旧が求められるが、複雑化した仮想化基盤では被疑箇所の特定が大きな課題となる。 そこでKDDIは、生成AIを障害特定に活用する技術開発に取り組み、2026年2月に「復旧支援AIエージェント」の商用環境での運用をスタートした。
同エージェントは、クラウド環境上に構築された音声通話、データ通信、au PAYなどのサービスに障害が発生した際、サービスとシステムの相関、設備アラーム、メンテナンス作業の状況などを統合的に分析して原因特定を支援する。ネットワーク機器や構成情報を集約した「運用向けデジタルツイン」上で、相関情報や設備アラーム、作業情報などを参照し、障害時の被疑箇所を絞り込む(図表1)。
図表1 運用向けデジタルツインにおけるサービス相関分析のイメージ

通信インフラ業務に活用するデジタルツインについて、KDDI コア技術統括本部 次世代基盤開発本部 副本部長の宮澤雅典氏はこう説明する。「現実のネットワークをデジタル空間にコピーするというより、設計、建設、開発、運用といった通信インフラ業務上で発生するデータを一元化し、業務に利用できるようにするもの」。サービス相関や構成情報、設備アラーム、作業情報を業務で使える形に集約することで、AIエージェントが障害時に参照できるデータ基盤となる。
KDDI コア技術統括本部 オペレーション本部 副本部長 兼 先端技術統括本部 先端プラットフォーム開発本部 副本部長の鈴木信貴氏は、「幸い、複数のシステムに及ぶような大規模障害は発生していないが、単体の障害においても工事による影響なのか、外部システムに起因するものなのかがすぐにわかり、原因特定に要する時間が短縮され、初動が早くなった」と手ごたえを感じている。

(右から)KDDI コア技術統括本部 次世代基盤開発本部 副本部長 宮澤雅典氏、
コア技術統括本部 オペレーション本部 副本部長 兼 先端技術統括本部 先端プラットフォーム開発本部 副本部長 鈴木信貴氏
こうしたデータ活用の基礎にあるのが、2021年から運用している「スマートオペレーション」だ。これは運用監視業務を大規模にDX化する取り組みであり、ネットワーク機器から取得する障害情報、CPUやメモリの使用率などの性能情報、セッション数やスループットといった通信品質に関わる情報をデータ基盤に集約し、ゼロタッチ・ワンタッチで障害対応などを行えるようにするものだ。従来の属人的な作業を平準化・自動化することで、「サービス復旧の負担が下がった」(宮澤氏)。復旧支援AIエージェントは、このスマートオペレーションを土台に、障害原因の特定や影響範囲の把握をさらに高度化するものと位置付けられる。
そしてKDDIは今、復旧支援AIエージェントの発展に取り組んでおり、障害原因を特定した後の設備保全作業まで支援する「保全AIエージェント」の2026年度中の実用化を計画している。通信設備の交換や切り離し、復旧後の組み込みといった作業は、サービス影響を避けながら慎重に進める必要があり、運用者の負荷も大きい。保全AIエージェントは、こうした作業の前後処理や実行判断を支援し、運用者を緊張度の高い定型作業から解放することを狙う。









