MNOが保持すべき役割
SNOが衛星コンステレーションに加えて自前のD2D向け周波数を持ち、MNOの免許に頼らずに端末への直接サービスを提供できるようになれば、両者は単なる補完関係から、モバイルカバレッジを巡る競合関係へと変化することも考えられる。アクセンチュアの堀口雄哉氏は、「NTNの商用化が進むことで、ローカルなMNOが一国のカバレッジを握るという従来の前提が変わりかねない」と警戒する。

アクセンチュア ビジネスコンサルティング本部 通信・メディア プラクティス日本統括 堀口雄哉氏
そこでMNOには、SNOとの役割分担を明確にし、自らが保持すべき機能を見極めることが求められる(図表3)。
図表3 MNOとSNOの役割分担イメージ
日本でも国内資本によるNTN関連の取り組みはあるが、Starlink級のLEOコンステレーションを“自前”で整備することは短期・中期的には現実的でない。堀口氏は、「NTNはクラウドのソブリン化と似た側面がある。海外企業のサービスを利用しながら、国内での運用の主導権を確保するという“現実路線”が必要だ」と話す。
欧州の「IRIS²」は、こうした主権性の論点を制度・政策として前面に出した先行例だ。EUは、LEO・MEO衛星などを組み合わせた多軌道コンステレーションにより、政府利用と商業利用の双方に対応する衛星通信基盤の整備を進めている。ウクライナ戦争で通信が安全保障に直結するという認識が高まるなか、域外企業への依存リスクを低減して通信インフラの主権性を担保することが目的であり、2030年ごろの本格運用を目指している。

三菱総合研究所 モビリティ・通信政策本部 ICTインフラ戦略グループ 伊藤陽介氏
「NTNは6Gの前提条件の1つになるが、地上網を置き換えるものではない。重要なのは、地上網、AI、クラウド、データセンターを含むデジタルインフラ全体の中で、国内に価値提供と運用主導権を残せる設計にすることだ」と三菱総合研究所の伊藤陽介氏は話す。ただ、一口に「補完」といっても、単なるエリアカバレッジにとどまらない可能性もすでに見えてきている。「AI Everywhereな世界が到来すると、NTNは地球上あらゆる場所からデータを収集し、また制御するための、AIインフラ基盤へと進化する」とNECの大神正史氏は語る。地上網とNTNが一体となってAI社会を支えるのが6G時代だ。

NEC ネットワーク ソリューション事業部門 主席プロフェッショナル 大神正史氏
6G時代、NTNはMNOの役割そのものを問い直す。MNOには、エンドユーザーに価値を提供し続けるための基盤作りが強く求められている。
[月刊テレコミュニケーション 2026年7月号の記事を再構成]













