60GHz帯無線LANの現在地 Wi-Fiと光ファイバーの間を埋める選択肢に

電波干渉が少なく、免許不要で使える手軽さを武器に、60GHz帯無線LANが存在感を高めている。光ファイバーの敷設が難しいエリアでの映像伝送から自治体の防犯対策まで、その活用シーンは着実に広がっている。

オフィスや教育機関、工場などでは、比較的安価で免許不要なWi-Fiが広く普及している。ただ、Wi-Fiで利用されている2.4GHzは、Bluetoothや電子レンジ等と周波数を共有しており、電波干渉が発生しやすい。

5GHz帯についても、一部のチャネルは気象レーダー等との共用となるため、レーダー信号を検出した際に周波数を切り替えるDFS(Dynamic Frequency Selection)機能への対応が義務付けられている。このため、利用環境によっては通信が一時的に不安定になるケースも少なくない。

こうしたWi-Fiの課題を解決する無線通信として注目を集めているのが、「60GHz帯無線LAN」だ。60GHz帯は指向性が高く、2.4/5GHz帯と比べて利用者が少ないため、電波干渉が起きにくい。Wi-Fi同様、免許不要で利用できる点もメリットだ。

ミリ波の特徴を活かした高速・大容量通信を実現できる点も、60GHz帯無線LANの強みである。2012年に最大7Gbpsのデータ転送を可能にする無線LAN規格「IEEE 802.11ad」(WiGig)が標準化され、2021年にはその後継規格となる「IEEE 802.11ay」が登場。チャネルボンディング(複数チャネルを束ねて利用する技術)やMIMO技術が新たに導入され、さらなる高速通信が可能になった。

60GHz帯無線LANブリッジ製品群「cnWave Vシリーズ」を販売するハイテクインター 営業部 部長の新井隆弘氏は、「専用線ほどのコストをかけずに、かつWi-Fiよりも安定した通信を求めるお客様にとって、60GHz帯無線LANが有力な選択肢の1つになりつつある」と話す。

また、2.4/5GHz帯に代わる無線通信として、電波干渉の少ない4.9GHz帯を利用する方法もあった。しかし、4.9GHz帯が5G向けに再編され、今年3月に新規開設の受付が終了したことを受け、「4.9GHz帯の代替候補として、60GHz帯無線LANに注目するお客様が増えている」とIT商社の理経 伝送・配信システム営業部 無線アクセスシステムセールスグループの竹内啓二氏は語る。

ただし、60GHz帯無線LANにも弱点があることは押さえておく必要がある。壁や障害物などの遮蔽物がないLoS(見通し)が得られる環境での利用が前提となるほか、雨による減衰を受けやすい。

また、数km程度の通信距離をうたう製品も存在するが、高スループットを発揮するには数十~数百m程度の短距離用途が中心となる。ただ、「電波が飛びにくいという性質は、裏を返せば遠方からの電波の影響を受けにくく、干渉を抑えられるという利点にもつながる」とハイテクインター 無線技術部 部長の松井仁志氏は解説する。

WiGig準拠から独自規格まで

次に、各ベンダーが提供する60GHz帯無線LANソリューションの性能・特徴を見ていこう。例えば、WiGigに準拠したハイテクインターの「cnWaveV3000」は、最大3.6Gbpsの高速通信が可能。同社の松井氏によれば、「1km時点での実効スループットは約600Mbps」だ。

用途に応じて、200m先で400Mbps程度の高速通信が可能なエントリーモデル「V1000」や、600m前後の距離で同程度のスループットを確保できる「V2000」、V1000/V2000/V3000を子機とした1対N構成に対応する「V5000」もラインナップしている。

(左から)ハイテクインターの60GHz帯無線LANブリッジ「V1000」、「V2000」、「V3000」、「V5000」。V1000は最長200m/最速400Mbps、V2000は最長600m/最速400Mbps、V3000は最長1km/最速600Mbpsの高速通信が可能。V5000は親機として利用でき、子機のV1000/V2000/V3000との組み合わせによる1対n構成に対応する(提供:ハイテクインター)

(左から)ハイテクインターの60GHz帯無線LANブリッジ「V1000」、「V2000」、「V3000」、「V5000」。V1000は最長200m/最速400Mbps、V2000は最長600m/最速400Mbps、V3000は最長1km/最速600Mbpsの高速通信が可能。V5000は親機として利用でき、子機のV1000/V2000/V3000との組み合わせによる1対n構成に対応する(提供:ハイテクインター)

WiGig対応製品に加え、独自規格・拡張方式を採用したソリューションも数多く存在する。例えば、イスラエルの通信機器ベンダー・RADWIN社が開発する60GHz帯無線LANソリューション「TerraNet V40」は、最大2.3Gbpsの通信速度と最長1kmの通信距離に対応する。そのロングレンジ版の「TerraNet V90」は、最大2.3Gbps/最長3kmの通信が可能だ。

TerraNetシリーズは、国内ではエイチ・シー・ネットワークス(HCNET)や理経などが取り扱っている。理経が千葉県内の海岸で晴天時に実施した実証では、V40は1km先において約800Mbpsの通信速度を確認できたという。V120については、「800m程度の距離であれば2.3Gbpsに近いスループットが得られる」とHCNET ソリューション技術本部 ソリューションビジネス推進部 主管技師の芝川晃一氏は説明する。

両社が取り扱う、同じくイスラエルの通信機器ベンダーであるCeragon社の「EtherHaul-600TX」は、1km程度(オプションアンテナを利用すれば2~3km程度)の距離で1Gbpsに近い通信性能を確保できるという。なお、EtherHaul-600TXはポイントツーポイント(1対1)接続のみに対応するのに対し、TerraNetシリーズは1台の親機で最大32台の子機を接続可能だ。

(左から)Ceragon社の60GHz帯無線LANソリューション「EtherHaul-600TX」、RADWIN社の「TerraNet V90」、「TerraNet V40/120」(提供:理経、HCNET)

(左から)Ceragon社の60GHz帯無線LANソリューション「EtherHaul-600TX」、RADWIN社の「TerraNet V90」、「TerraNet V40/120」(提供:理経、HCNET)

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