なぜ「Asterisk」に再び脚光?――「日本」対応で普及加速するオープンソースIP-PBXソフト

オープンソースのIP-PBX「Asterisk」に再び注目が集まっている。対応するIP電話サービスの登場や、使い勝手の向上が図られるなどしたためだ。なかでもCTIでのコストメリットは顕著だ。

国内で「Asterisk」(アスタリスク)が再注目されている。Asteriskは、米Digium社が開発したオープンソースのソフトウェアIP-PBX。従来高価なPBXでしかできなかった企業向けの構内電話交換機能を、安価な汎用PCサーバーで実現できる。2004年9月に正式版がリリースされた。

当初は大きな話題となり、AsteriskベースのSIPサーバーを開発するメーカーも続々と登場。企業向け電話市場に変革をもたらすと期待する向きもあったが既存のPBX/ビジネスホンの使い勝手の良さなどを重視するユーザーが多かったことなどから、次第に勢いを失っていった。2008年の暮れには、市の職員が独学でAsteriskベースの内線網を格安で構築した秋田県大館市のケースが話題になったが、普及を後押しするまでのインパクトはなかった。

では、なぜ今、再びAsteriskが脚光を浴びているというのか。その理由を解説する前に、まずはAsteriskの基本を整理しておこう。

Asteriskのメリット・デメリット

Asteriskの最大の特徴は、オープンソースのため、メーカーのPBX/ビジネスホンよりも安価でシステム構築できる点だ。また、オープンソースゆえにカスタマイズも容易であり、IVRやCRM、CTI等との連携などを低コストで独自に作り込むことができる。

その反面、デメリットも多い。以下に主な点を挙げる。

(1)数百あるPBXの機能のすべてを利用できるわけではない

(2)電話機操作等の使い勝手が悪い
例えば、パーク保留を利用する際にラインキーのランプ表示に対応していないなど、これまで日本の企業が慣れ親しんだ使い勝手の良さを犠牲にしなければならない。

(3)メーカーサポートがない
ユーザー自らがAsteriskを導入する場合には、当然ながらメーカーサポートがない。また、Asteriskを採用したメーカー品を使うケースなどでも、通常のハードウェアPBXほど手厚いサポートを受けられない可能性がある。

(4)日本では通信キャリアが未対応
通信キャリアの電話サービスを利用するには、ゲートウェイ(GW)が必要となる。GWは高価なため、いくらAsteriskでPBX部分は安価にできても、トータルコストは大きく下がらないケースがあった。

フュージョンの正式対応で高価なGWが不要に

最近Asteriskに普及の兆しが見えてきたのは、これらのデメリットが少しずつ改善されてきたからに他ならない。

キャリアの対応については、2010年4月21日にフュージョン・コミュニケーションズが、日本のキャリアでは初めてAsteriskに正式対応。AsteriskベースのIP-PBXでも同社のIP電話サービス「FUSION IP-Phone」を利用できるようにした。これにより、外線にFUSION IP-Phoneを利用した場合は、GWの導入費用が不要となった。

フュージョンの対応を受けて、AsteriskベースのIP-PBXも増えてきている。シーボーンの「Re-Vox」(リボックス)は、手のひらサイズの超小型IP-PBX。複雑なPBXの設定をネットワーク経由で約2時間で行える点を特徴としている。iSERVEの「Arnex mini100F」は弁当箱サイズの小型PBXで、業界最安水準の3万4800円がセールスポイントだ。単体販売だけでなく、FUSION IP-Phoneとブラザー工業の多機能ルーターを組み合わせたSMB向けIP電話ソリューションも提案している。

このほか、以前からAsteriskベースの「trixboxPro」を扱うコミュニケーションビジネスアヴェニューもFUSION IP-Phoneとの連携を実現した。trixboxProは米Fonality社が開発した製品で、同社が国内総代理店契約を締結。世界97カ国、6000社以上で導入されているという。

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