中国発の3.9G「TD-LTE」の威力(後編)――世界の商用化動向とソフトバンクの狙い

中国にとどまらず、世界的に導入機運が高まっているTD-LTE。後編では、中国など世界各国の商用化に向けた動きと、TD-LTE採用が噂されるソフトバンクの狙いについて解説する。

前編ではTD-LTEの概要やポストWiMAXとして注目が集まっていることなどを見たが、では現在、TD-LTEの実用化はどこまで進んでいるのだろうか。中国では、2つの大規模フィールドトライアルが進行している。

商用化時期は不透明

1つが、中国工業情報化部(MIIT)が中心となって推進するプロジェクトだ。LTEの相互接続環境の整備を進める国際組織のLSTIや中国の通信事業者、ベンダーなどが参加しており、09年秋から屋内での伝送試験や相互接続試験が実施されている。また、北京郊外では小規模なフィールドトライアルが、モトローラ、エリクソン、ノキアシーメンスネットワークスなどの外資ベンダーと、ファーウェイ、ZTEなどの中国ベンダーに分かれてそれぞれ行われている。2010年後半からはその第2フェーズとして300~500の基地局を設ける大規模トライアルが1年にわたって実施予定だ。

もう1つは、中国移動が進めているものである。5月1日に開幕した上海万博会場で、会場全域と主要パビリオン内をエリアとした大規模なフィールドトライアルが実施されている。ネットワークの構築はファーウェイ、モトローラ、上海ベルアルカテル(アルカテル・ルーセントの現地合弁会社)の3社が担った。

TD-LTEデモ
モトローラが上海万博で実施している24本のビデオを同時にストリーミングするデモ。1台のTD-LTE USBドングルで20Mbpsのデータ通信を実現している

上海万博のトライアルで屋外基地局やコアネットワークなど基本インフラの構築を担当したファーウェイで中国地域担当シニア・マーケティング・マネージャーを務めるシュウ・ジンガオ氏は、このネットワークを「世界初の実用段階に入ったTD-LTEネットワーク」と評する。

さらにジンガオ氏は「中国移動は今年後半、沿海部の都市でそれぞれ100局程度の基地局を建設して本格的な試験サービスを実施する計画」だと明かす。

このトライアルでは、「送受信に8対のアンテナを用いる(8T/8R)のスマートアンテナを基地局に実装することがベンダー各社に求められている」という。中国移動がTD-LTEにおいて、かなりの高速・大容量なネットワーク構築を想定していることが窺えよう。

ただし、現在のところ中国移動はその商用化時期を明確にしていない。ベンダーサイドも「どう展開するのか、まったく予想がつかない」(エクソンの藤岡氏)など、慎重な見通しを示す向きが多い。ファーウェイのジンガオ氏は「大規模商用化には3~5年程度の時間が必要になるのではないか」と見る。中国でのTD-LTEの展開の本格化には、まだ時間がかかる可能性もありそうだ。

月刊テレコミュニケーション2010年6月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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