ICT×未来

ドコモ・KDDIのドローン戦略――携帯電話網で「自律飛行」を本当に実現できるか?

文◎藤井宏治(IT通信ジャーナリスト) 2017.06.29

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携帯電話網をドローンの通信基盤として活用する「セルラードローン」の実用化に向けてNTTドコモとKDDIが積極的な動きを見せている。その狙いはどこにあるのか。

 
ドローンでは、操縦者が手元のコントローラーからWi-Fiなどの無線を介して操作する形が一般的にとられている。こうした手法ではコントローラーからの電波が直接届き、肉眼で機体の状態を把握できる1~2km程の範囲でしかドローンを飛ばすことができない。

「セルラードローン」は、その無線通信手段に携帯電話網を利用するもの。自律飛行などの仕組みと組み合わせ、広域でのドローン飛行を実現する。

携帯電話の上空での利用は電波法で禁じられており、現状ではこうした運用はできないが、総務省は昨年7月に省令を改正。通信事業者が「実用化試験局」の免許を取得して、実証実験を行えるようにした。これを受け、昨年9月にNTTドコモ、11月にKDDIが試験局免許を取得して実証実験に乗り出している。

これらの実証実験は携帯電話の上空利用の実現に向けた技術検証を目的としたものだが、ドコモとKDDIは同時に事業化に向けたユースケースの検証も進めている。両社の動きを軸に、セルラードローンによるビジネスの可能性を見ていこう。

見通し外飛行に成功セルラードローンの活用が期待されているユースケースの1つに「物流・配送」がある。

物流・配送分野でのドローンの活用については、米アマゾンなどが積極的に取り組んでいることが知られている。日本でも2015年11月の「未来投資における官民対話」での安倍晋三首相による「早ければ3年以内にドローンを使った荷物配送を可能とすることを目指す」という発言を契機に、実用化の機運が高まった。物流・配送にドローンを活用するには、広いエリアをカバーできる運航管理用の無線システムが必要となる。セルラードローンはその有力な実現手段の1つと、目されているのである。

総務省は、ドローンによる携帯電話利用の解禁時期を明確にしていないが、通信事業者の間では政府がドローンの物流・配送分野での利用開始のターゲットとする2018~2019年頃の実現を予想する向きが多い。

この物流・配送分野でのドローン利用を想定して実証実験を進めているのが、ドコモだ。昨年11月から12月にかけて福岡市で、ドローンベンダーのエンルート(本社・埼玉県ふじみ野市)、高齢者支援サービスなどを手がけるMIKAWAYA21(本社・東京都港区)とドローンを活用した離島への物品配送の実証実験を実施。同じく11月から千葉市で楽天、産業用ドローンを手がける自律制御システム研究所(ACSL、本社・千葉市)と高層マンションへの物品配送の実現を目指した実証実験もスタートさせている。

福岡市での実証実験で能古島に到着したドローン。荷物はワイヤーで吊り下げて運んでいる
福岡市での実証実験で能古島に到着したドローン。荷物はワイヤーで吊り下げて運んでいる


福岡市での実験は同市西区の「福岡市ヨットハーバー」から、海を隔てて約2.5km離れた能古島(のこのしま)まで、住民が注文した荷物を届けるという想定で行われた。使用された機体はエンルートの自律飛行型ドローンをベースとしたもので、スマートフォンをUSBテザリングで接続することで、ドコモのLTE網を介してヨットハーバーに設けられたオペレーションセンターの制御用PCとの通信を可能にした。

ヨットハーバーから能古島への飛行は、GPSで位置を把握し事前に設定したルートに従って飛ぶ形がとられたが、飛行中のドローンの位置や飛行姿勢、バッテリー残量などの情報はリアルタイムで制御用PCに送られ、トラブルが生じた場合はPCからコマンドを送出して出発地に戻すなどの操作が可能になっている。

ドローンにはビデオカメラが搭載されており、飛行状況を映像でモニターできるようにもなっている。航空法では、ドローンを操縦者が直接視認できない場所で飛行させる場合(目視外飛行)、ルート上に監視要員の配置などの安全確保措置を取ることを求めている。高速データ通信が可能なLTEの特性を活かした映像伝送により、この要件をクリアしたのだ。

実験では、微妙な操作が必要となる離陸時と荷降ろし時には、現地のスタッフがコントローラーを使って2.4GHz帯の無線で制御を行っている。福岡での実験を担当したNTTドコモ IoTビジネス部の石川太朗氏は「実績がなかったので今回はローカルで操作を行ったが、数を重ねていけば、携帯電話網経由の遠隔操作だけで完全に制御できるようになる」と見ているという。
NTTドコモ 石川太朗氏
NTTドコモ 法人ビジネス本部 IoTビジネス部 ビジネス企画事業企画担当課長 事業戦略担当課長 石川太朗氏

ドコモが千葉市で行っているもう1つの実証実験は、逆に人口が密集する都市部での技術面・事業面の検証を目的としている。11月22日に実施されたデモンストレーションでは、東京都世田谷区の楽天本社からの遠隔制御で、ドローンを稲毛海浜公園内で飛行させ、荷物の受け渡しが行われた。
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