IIJが2017年度下期より「フルMVNO」提供――IoTで新たなサービスが可能に

インターネットイニシアティブ(IIJ)は2016年8月30日、「フルMVNO」によるデータ通信の商用サービスを17年度下期に開始すると発表した。

フルMVNOでは、SIMカードを管理するためのデータベースである「HLR/HSS(加入者管理機能)」を自社で管理することで独自のSIMカードの調達・発行が可能となり、自由なサービス設計が行えるようになる。そのためには回線を提供しているNTTドコモの了承が必要になる。IIJによると、29日にドコモに対してHLR/HSS連携の申し込みを完了し、同日中にドコモより承諾書を受領したという。

代表取締役会長CEOの鈴木幸一氏は「ワイヤレス通信が将来のネットワーク社会の基本的なインフラとして重要な役割を果たす。HLR/HSS連携により、我々の新しいサービスを作り出す第一歩になる」と抱負を語った。

IIJは08年にMVNOに参入、翌年にはNTTドコモとのレイヤ2接続を開始した。その後もLTEサービスや法人サービス、音声通話機能などを提供し、加入者を増やしてきた。今年6月末時点の回線数は、約140万回線に達する。

しかし最近はMVNOのプレイヤーが増加し類似のサービスが多くなっており、競争が激化している。取締役CTOの島上純一氏は「レイヤ2接続によって海外の端末メーカーが国内のSIMロックフリー市場に参入するなどスマートフォン市場でイノベーションが起きたが、そろそろ限界に近づいている。新たなブレークスルーが必要」と指摘した。

そうした中でIIJは14年夏から、HLR/HSSの開放をめぐりドコモとの間で事業者間協議を続けてきた。従来、MVNOは大手キャリア(MNO)のSIMカードを借りる形で、SIMカードに含まれる情報はコントロールすることができなかった。それがHLR/HSSをMVNOが保有することで、今後の発展が見込まれるIoT(Internet of Things)では、組み込み型SIMの提供や、課金・開通管理を自由にコントロールできるサービスの開発が可能になり、新たなMVNOビジネスモデルの創出が期待されるという。

フルMVNOでは、IIJの独自SIMカードの調達が可能になる

具体的には、SIMカードを部品のように機器に組み込み、必要な時に必要な接続サービスを利用できるよう後からSIMをアップデート可能になる。これまでは出荷先の国ごとに異なるSIMカードを用意しなければならず、製造ラインでSIMカードを装着できないことが課題とされていた。

また、海外のMNOやMVNOと提携し、1枚のSIMカードで国内外の通信サービスを安価な料金で提供する「マルチカントリーMVNO」も想定される。さらに、SIMにNFC機能を搭載したり、Fin Techを活用したモバイル向け金融サービス、マイナンバーと連携した認証機能なども考えられるという。

なお、フルMVNOの実現には数十億円規模のコストがかかるが、「それだけのビジネスチャンスがあり、我々の提供するサービスで十分に回収できる」(鈴木氏)としている。

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