700MHz帯の割当変更を巡り応酬、ガラパゴス化肯定論も――周波数WG第4回会合

総務省「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」の「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ」第4回会合が、2010年6月28日に開催された。同WGは、総務省が検討中の700/900MHz帯の割り当てプランが海外の周波数割り当てと整合性がなく、産業競争力を確保の上で懸念があると指摘されたことを受けて設置されたもので、周波数割り当政策の再検証が進められている。

6月8日の2回会合からはパブリックコメントへの意見提出者を対象としたヒアリングが実施されており、今回はNEC、富士通、パナソニック、クアルコムジャパン、日本エリクソン、インテル、日本無線、CIAJ(情報通信ネットワーク産業協会)、アプリックス、NICT(情報通信研究機構)、ATR(国際電気通信基礎技術研究所)と齋藤忠夫東京大学名誉教授が意見を述べた。

焦点の700/900MHz帯の割当では、大きく(1)総務省が検討してきた700MHz帯と900MHz帯をペアにする案と、(2)700MHz帯と900MHz帯それぞれに、海外のバンドプランと調和したペアバンドを設定する案の2つが俎上にあがっている。

ヒアリングではNECと富士通が、急増するデータトラフィックの伸びに対応するためには早期利用が可能な700MHz帯と900MHz帯のペア案が望ましいとする意見を述べた。さらに富士通は個別にペアバンドを組む案では900MHz帯には最大15MHz×2の帯域しかとれず、ワイヤレスブロードバンドに対応し難いと指摘した。

他方パナソニックは、帯域の離れた700MHz帯と900MHz帯をペアにした場合、アンテナの大型化やロスの増加など技術的な問題が生じることや、近隣国との干渉の懸念などから、700MHz、900MHzのそれぞれの帯域の中でペアバンドを組む形が望ましいとした。

この間、700/900MHz帯の海外とのハーモナイズを主張してきたクアルコムジャパンと日本エリクソンは、700MHz帯ではアジア太平洋地区の周波数プランを検討している国際組織AWFの案を、900MHz帯は欧州などで利用が始まっているUMTS900のバンドプランを導入する案を改めて提起した。

特にAWF案については3月の会合で700MHz帯に45MHz×2を設定するプランが固まっており、これにあわせることで「最大3社への割り当てが可能になる」(クアルコム)とした。さらに「すでに韓国、オーストラリア、インドなどがこのプランの導入に動き出しており、2GHz帯とならぶ国際バンドになる可能性が高い」(エリクソン)と説明した。

両社は、このプランの導入に向け、デジタルテレビのチャネル数の削減、既存のテレビ中継や業務用ワイヤレスマイク、割り当て予定のITS(車両の衝突防止システム)の移行などの具体的な再編案や費用負担の提言も行ったが、実際に調整が完了し、導入が可能になる時期については明言を避けた。

インテルは、900MHz帯へのUMTS900の導入とともに、700MHz帯についてWiMAXなどのTDDシステムで使うプランを提案した。TDDはペアバンドが不要なので現行の700MHz帯移動通信向け帯域に導入でき、(1)2012年の導入スケジュールを動かさなくて済む、(2)割当予定の40MHz幅で十分ブロードバンドに対応できるなどの利点があるとした。

さらにインテルは、700MHz帯に導入が予定されているITSについて、日本独自の周波数を使うこのシステムは「ガラパゴス化の恐れが極めて高く、日本の優れたソリューションを世界に展開し、日本の成長を促す新成長戦略の妨げとなる」として、割当の再考を求めた。

これに対しトヨタIT開発センターのCTOを務める齋藤名誉教授は、ITS推進の立場から伝送特性の優れる700MHz帯を使うことで本当に役に立つ衝突防止システムが実現できる、海外でもこの種のシステムへの関心は高いと反論、現行案通りの割当が望ましいとした。

ヒアリングでは、ワイヤレスブロードバンドの政策自体についての提言も行われた。中でも携帯電話向けソフトウェアのアプリックスは、世界市場で急成長する韓国が国内では独自規格を使っていることを例に挙げ、「ガラパゴス化は必ずしも産業競争力のマイナス要因ではない」と指摘した。

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