クアルコムが無線技術で目指す「未来のクルマ」とは?

クアルコムが、自動車業界向けビジネスに本腰を入れている。2本柱は、DSRC(狭域通信)とワイヤレス充電。担当バイス・プレジデントのクリス・ボローニ・バート氏は「これらが未来の自動車の重要な要素技術になる」と見る。

2013年10月16日、クアルコムジャパンは東京都内で、自動車業界向け事業に関する記者説明会を開催。クアルコム本社で同分野の事業開発を担当するバイス・プレジデントのクリス・ボローニ・バート氏が、(1)5.9GHz帯DSRC(狭域通信)を利用した車と歩行者との出会い頭の事故を防止する新システムと、(2)電気自動車向けのワイヤレス充電システムの2つの取り組みを中心に、同社の自動車関連ビジネスを解説した。

バート氏は、大手自動車会社GMでEN-V(Electric Network Vehicle:ネットワークにつながった電気車両)のプロジェクトのディレクターを務めた後、昨年8月にクアルコムに入社している。

米クアルコム クリス・ボローニ・バート氏
米クアルコム ストラテジック ディベロップメント、バイス・プレジデント クリス・ボローニ・バート氏

ホンダと衝突防止技術を開発

(1)の事故防止システムで用いられるDSRCは、自動車の安全確保のための無線通信技術として欧米で導入が進められているもの。無線方式には無線LANをベースとした路車間/車車通信技術IEEE802.11pが使われており、無線LANとのシステムの共通化によるコストメリットが期待できるとされる。米国ではデトロイト市で3000台規模の実証実験が進行中だ。

クアルコムは、車両側だけでなく歩行者が持つスマートフォンにもDSRCのモジュールを搭載。両者が接近すると双方に警告を発し、出会いがしらの事故を防止するシステムの開発を進めており、デトロイトでホンダと共同でデモを行った。

クアルコムは、車車間通信用としてDSRCの通信モジュールを供給しているが、これをスマートフォンにも実装し新たな用途開拓につなげる。

事故防止システムでスマートフォンに表示される警告のイメージ
事故防止システムで車両の接近時にスマートフォンに表示される警告のイメージ

バート氏によるとこの衝突防止システムの実用化には、課題も多いという。DSRCの実装によるスマートフォンの電力消費の増大、正確な位置をスムーズに取得する方法の開発などだ。また、多数のスマートフォンが存在するエリアで確実に通信ができる技術、分かりやすいUIも重要な開発テーマだ。

クアルコムは解決に向けた研究・開発に取り組んでおり、例えば、消費電力の問題では、自宅など危険のない場所にいることを検知してDSRCの電源を切る、正確な位置の把握では無線LAN測位の活用などが検討されているという。

このシステムの当面のターゲットは欧米だが、日本でも別の通信技術を利用したDSRCが、近接する5.8GHz帯で運用されていることから、クアルコム ジャパンでは「ぜひ日本でも11pベースのシステムを使えるようにしていきたい」(事業戦略部長の前田修作氏)とする。

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