NECビッグローブは4月22日、OpenFlow技術を活用したSDN(Software-Defined Networking)を、自社データセンターに導入したと発表した。この4月からBIGLOBEのほとんどのサービスがSDN上で稼動しているという。
BIGLOBEが今回導入したのは、エッジ・オーバーレイ方式のSDNだ。OpenFlow対応のハードウェアスイッチは利用せず、従来の物理ネットワークインフラはそのままにSDNを実現している
「ステップ1でNWの仮想化、ステップ2ではDC全体を仮想化」
NECビッグローブ 基盤システム本部 エキスパートの田口敏宏氏によると、BIGLOBEでは3つのステップでデータセンターの仮想化を進めており、現在はステップ2まで完了したところだ。
データセンター仮想化の3つのステップ |
BIGLOBEがデータセンターの仮想化を推進する目的は、「スピードと柔軟性の両立」(田口氏)にある。2008年ごろからBIGLOBEではサーバーの仮想化を行ってきており、数分でサーバーを提供できるようになった。しかし、スピードの点では優れているものの、「ファイアウォールや専用ネットワークを自由に使えない」など、ネットワークの柔軟性に課題があったという。一方、システムごとにSIするやり方であれば、必要な要件を満たしたネットワークを柔軟に用意できるが、スピードが課題になる。
スピードと柔軟性の両立がデータセンター仮想化の狙い |
そこで、この2つを両立させるためにBIGLOBEはまず2012年9月からステップ1として、MVNOやISPの基盤を支えるサービスでSDNのパイロット運用を開始。そして4月からのステップ2で、SDNの本格運用をスタートさせるとともに、クラウドコントローラによるサーバーとネットワークの一括制御を可能にした。「ステップ1でネットワークの仮想化、ステップ2ではデータセンター全体の仮想化を実現した」と田口氏。
ここで重要なポイントとして挙げられるのは、独自開発したクラウドコントローラ「momiji」である。momijiによって、サーバーの台数やネットワークの種類、IPアドレスの種類など約10項目を入力するだけで、インフラを自動構築できるようになったという。「今まで約2週間かかっていた構築・接続の作業を10分に短縮している」とのことだ。また、ファイアウォールやロードバランサの有無、グローバルやプライベートなどIPアドレスの種別等も設定可能で、柔軟性の高いインフラ構築も可能にしているという。
momijiの設定画面 |
momijiはNECと共同開発したクラウドコントローラで、OpenFlowコントローラやサーバーコントローラ、VXLANコントローラなどの各制御機能をモジュール化して実装。また、オープンソースも積極採用しているという。これにより、今後の技術トレンドの変化に柔軟に対応できること、特定ベンダーに依存しないことを目指した。
momijiの概要 |
さらに独自開発した運用監視機能の搭載や、OpenFlowとVXLANを組み合わせたネットワーク制御なども特徴。トンネリングプロトコルにVXLANを採用したことで、スイッチやルーターなど物理ネットワーク機器の設定変更なしに複数拠点のネットワークを接続することができ、例えば企業内の基幹システムや他社データセンター上の既存システムとも接続可能だという。