NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は2013年4月18日、同社のクラウドサービスをグローバル展開する上での方策をまとめた企業向けサービスビジョン「Global Cloud Vision」に関する説明会を開催し、サービス拡充への取り組みと今後の展開について説明した。NTTコムがGlobal Cloud Visionに基づいて事業を推し進める上で、2013年度は以下の“9つの特長”を以てグローバル企業へアプローチするという。
グローバル企業を取り込むNTTコムの9つの特長 |
なかでも、(1)グローバルなインフラ整備、(2)クラウドサービスの拡充、(3)クラウドシームレスなネットワーク、(4)マイグレーションサービスの4点を重点的に強化していくようだ。
まず、(1)グローバルなインフラ整備については、現在、データセンター(DC)を継続的に建設している。2013年3月現在で、国内では91拠点、APAC(アジア太平洋地域)に19拠点、中国・香港に9拠点、欧州に12拠点、そして米州諸国に7拠点を展開している。4月下旬に東京、5月中にロンドンに新設するのを皮切りに、今後はタイ、マレーシア、中国などアジアを中心に順次新設していく。
説明のなかで、マレーシアで4カ所目となるDCの建設を同日開始したことも発表された。総合開発地域「マルチメディア・スーパーコリドー」の中核都市サイバージャヤに「マレーシア サイバージャヤ4 データセンター」を新設し、2014年5月からサービスを提供開始する予定だ。有馬 彰 代表取締役社長によると、「マレーシアは工事費も利用料も安価であり、同国のDCは競争力が高い」。
次に、(2)グローバルなクラウドサービスの拡充として、同社の企業向けプライベートクラウドサービス「Bizホスティング Enterprise Cloud」の今後の展開について説明された。Bizホスティング Enterprise Cloudは、DCおよび通信設備、セキュリティサービスまで合わせたサービスで、基幹システムの基盤としても活用できる。パブリッククラウドサービス(Windows Azure Platform、Microsoft Office 365など)のほか、オンプレミス、パブリッククラウドとも連携することができる。
また、4月22日からは機能を拡充し、専用機器におけるストレージの処理能力を従来比約3倍に高速化したストレージメニュー「Premium Plus」、仮想サーバー全体をバックアップする「イメージバックアップ」、テンプレートから簡単にOracleおよびSQL Serverを構築できる「データベースライセンス」を提供する。併せて、セキュリティを強化する「ネットワークプロファイリング」や「リアルタイムマルウェア検知」も新たに利用可能になる。
赤く強調されているのが4月22日に拡充される機能 |
仮想ネットワーク技術で革新
「Bizホスティング Enterprise Cloudの最大の特徴は、世界で始めて仮想ネットワーク技術を取り入れていること」と有馬氏が話すように、仮想ネットワーク上でDCサーバーを自動で設定できる点が他社サービスとの差別化要素となっている。これにより、これまで設定変更に要してきた時間とコストを大幅に削減する事が可能となる。
仮想ネットワークによるDCサーバーの自動設定は世界初の技術だという |
一方、(3)“シームレスな”グローバルネットワークの構築においても、仮想ネットワーク技術を活用する。従来はクラウドとDC内のネットワークの接続をカスタマーポータル経由で自動化していたが、2013年の第3四半期にはゲートウェイの設定も仮想化する予定だ。VPNサービスには同社の「Arcstar Universal One」を用いる。Arcstar Universal Oneはバックアップ回線の標準二重化やシームレスなネットワーク環境など、クラウドに必要なネットワーク環境を標準で備えている。
ゲートウェイは接続回線料やデータ転送料が無料で提供される |
仮想ネットワーク技術は、NTTコムが提供する(4)マイグレーションサービスにも活かされる。2013年夏を目処に、既存システムのIPアドレスを変更せずにクラウドへのマイグレーションが可能となる新サービスを提供する予定だ。仮想ネットワークを企業内システム(オンプレミス)へ張り出し、それを介してオンプレミスサーバーのIPアドレスと同一のアドレスでクラウドに移行することができるようになるという。
このように、NTTコムは仮想ネットワークを取り入れることで、クラウドサービスを大きく進化させ、訴求力を高める戦略だ。今後の目標として、有馬氏は「2011年に840億円だったクラウド/DC事業における収益を、2015年には2000億円にまで伸ばしたい」と述べた。