LTE-Advancedとは?(Part2)――国内3キャリアのLTE-Advanced導入シナリオを読み解く

LTE-Advancedの要素技術の1つであるキャリアアグリゲーションを使えば、既存のLTEインフラをベースに容易に高速化を実現できる。それでは、国内キャリアはどんなシナリオで導入していく考えなのか。国内3キャリアのLTE-Advanced導入シナリオを読み解く。

LTE-AdvancedはPart1で見た通り、まったく新しい通信システムというより、現行のLTEのグレードアップ手段として捉えたほうが実態に近い。では、国内3キャリアはどのようなLTE-Advancedの導入シナリオを描いているのか。Part2では、日本でも2014年頃の導入が見込まれているキャリアアグリゲーション(CA)を中心に、国内キャリアの「LTE-Advanced戦略」を考えてみることにしよう。

図表1 キャリアアグリゲーションの導入メリット
キャリアアグリゲーションの導入メリット

2014年にも150Mbpsを

海外では、米AT&T、米スプリント、韓国のS K テレコムが2013年のLTE-Advanced導入を表明している。このうちSKテレコムは2012年から、LTEを展開している850MHz帯(バンド5)と1.8GHz帯(バンド3)でCAを導入、高速サービスを実現する計画だ。

同様の動きは日本でも出てきている。KDDIは2014~15年に、800MHz帯と2.1GHz帯および800MHz帯と1.5GHz帯をCAで組み合わせ、現行LTEの最高速度である下り最大150Mbpsのサービスを提供する考えだ。同社は、2.1GHz帯には20MHz幅(FDDの片側分、以下同)の割当を受けており、現在はこのうち5 ~10MHz幅をLTEで利用している。2013年秋には2.1GHz帯のLTE帯域を15MHz幅まで拡大することで、現行の下り75Mbpsの最大通信速度を下り112.5Mbpsに引き上げる考えだ。

とはいえ、2GHz帯は都市部の3Gトラフィックの受け皿としての役割を担っており、当面は20MHz幅すべてをLTE化するわけにはいかない。そこでKDDIでは、下り最大75Mbpsのサービスを展開しているLTEの主力バンドである800MHz帯と2GHz帯のそれぞれ10MHz幅をCAで組み合わせて150Mbpsのサービスを実現しようとしているのだ。

KDDIは同時に、LTEのトラフィック対策バンドとして都市部を中心に整備している1.5GHz帯の10MHz幅も800MHz帯と組み合わせ、150Mbpsサービスの容量を確保する。まずは187.5MbpsからNTTドコモも2014年から2015年にかけてCAの導入を計画している。

ドコモが想定しているCAの組み合わせは、2.1GHz帯と1.5GHz帯、2.1GHz帯と800MHz帯の2つ。このうち特に注目されるのが、前者の2.1GHz帯と1.5GHz帯のペアだ。ドコモは、1.5GHz帯で唯一、同社に割り当てられた15MHz幅を使って、仙台や新潟、金沢などの地方都市で下り最大100Mbps(今春には112.5Mbps)のサービスを提供している。2014年春には、割当条件によって現在は提供できない東名阪地区でも下り最大112.5Mbpsサービスをスタートさせる。

他方、2GHz帯でも、2013年から大都市圏で10MHz幅を使った下り75Mbpsサービスの展開を本格化させる。この2つのLTE帯域を組み合わせれば、計25MHz幅を確保して下り182.5Mbpsのサービスが提供できる可能性があるのだ。

150Mbpsを超えるサービスの実現には、対応端末が登場するかが問題になるが、3GPPでは現行LTEと同じ2×2MIMOによる下り最大300Mbpsのサービスに対応できる端末カテゴリ「クラス6」の仕様が固まっている。2014年には製品が出てきそうだ。

図表2 LTE-Advancedの端末カテゴリ
LTE-Advancedの端末カテゴリ

ドコモでLTE/LTE-Advancedの技術開発を担ってきた取締役常務執行役員(CTO)・研究開発センター所長の尾上誠蔵氏は、現時点ではサービス内容は未定としながらも「世界で最初に出てくるCAの組み合わせは20MHz幅以下、下り最大150Mbps以下と想定している。しかし、LTE-Advancedの意味は、CAによって現行LTE以上の25MHz幅以上の帯域で187.5Mbpsを超えるサービスを実現できることにある」と、CAの展開に意欲を見せる。ドコモは2GHz帯では当面15MHz幅までをLTEで利用する計画なので、下り最大225Mbpsのサービスも視野に入ってくる。

図表3 国内で導入の可能性がある帯域間CAの組み合わせ(リリース11)
国内で導入の可能性がある帯域間CAの組み合わせ(リリース11)

CAによる最大通信速度の向上には、マーケティング上の狙いが大きいが、尾上氏はCAを他の技術要素と組み合わせることで、他にも大きな利点が生じるという。例えばCAで組み合わせる帯域の1つを通常のマクロセル、もう1つを非常に小さな小セルで構築することで、接続性を確保し難い小セルの弱点を補い、大容量で安定した通信が可能なネットワークが実現できるというのだ。

また、エリクソンの藤岡氏も「基地局の配置が異なる周波数の低いバンドと高い周波数のバンドを組み合わせると、LTEの弱点であるセルエッジの速度低下を抑える効果が期待できる」と指摘する。CAは導入の仕方次第でネットワーク容量の拡大や通信の安定性向上にも寄与するのだ。

月刊テレコミュニケーション2013年2月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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