PBX・ビジネスホン市場の関係者からは、「下げ止まり」の声が聞かれるIPテレフォニー市場。10月に「国内企業VoIP機器市場予測」を発表したIDC Japanは、2009年の同市場規模(IP-PBX、IPビジネスホンシステム、VoIPゲートウェイ、IPフォンの合計)を840億3600万円、対前年比10.7%の縮小と推定。2010年については上半期(1~6月)の市場実績が対前年同期比3.4%減と発表した。下げ幅が緩やかになったことについて、ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーの眞鍋敬氏は、「2000年代初期に導入したユーザーがリプレース期を迎えた」ことを要因の1つに挙げる。
2009年に既存設備の更新を見送ったユーザーは少なくない。この“積み残し”を背景に、2011年以降はリプレース需要がある程度回復するだろう。
ただし、眞鍋氏は、「大・中容量のIP-PBXやSIPサーバーは低調で、小容量のIPビジネスホンが順当に出ている傾向がある」と指摘する。2010年上半期の「IPテレフォニー市場全体」と「IPビジネスホンシステム」のみの数字を比較すると、市場全体が対前年同期比3.4%減だったのに対し、IPビジネスホンは同0.6%減と、下げ止まりが顕著になっている。
他のデータにも目を向けてみよう。図表は、経済産業省の機械統計における「ボタン電話装置の出荷状況(販売金額)」をグラフ化したものだ(2010年下期以降は編集部の推計)。2010年上期は対前年比11.3%増となり、ビジネスホン市場の回復基調がはっきりと読み取れる。
図表 ビジネスホンの出荷状況(販売金額) |
導入コストが安価なビジネスホンが上位機種のPBX市場を侵食している――。そうした状況はここ数年、PBX/ビジネスホンを販売する通信系ディーラーからも度々聞かれたものだ。単なる電話設備の更改であれば、企業の目がより安価なシステムへと向かうのは必然。IPテレフォニー市場全体の動きとしては、出荷台数・ポート数は上向くも市場規模は逓減する傾向が続くだろう。