携帯4社の次世代インフラ戦略を読み解く[第2回]3.9G向け周波数割当を巡る動き(1)――1.5/1.7GHz帯編

携帯キャリアの次世代インフラ戦略を大きく左右するのが、総務省による周波数割り当てである。今回は2009年6月に決まった1.5/1.7GHz帯の割り当てのポイントを解説する。

連載第1回で見たように、LTEや高度化HSPAといった次世代システムでは、100Mbps超の高速データ通信が実現可能だ。ただし、そのためには15~20MHz幅のまとまった周波数帯域が必要となる。また、最大通信速度の観点だけでなく、急増するデータトラフィックへの対応という意味でも、周波数帯域の大幅な拡大は不可欠だ。

そこで総務省は近年、移動体通信向け周波数割当の拡大に力を入れてきた。

例えば2009年7月、UQコミュニケーションズがWiMAXの商用サービスを開始したが、これは2007年12月に新たに割り当てられた2.5GHz帯を利用したものだ。なお、2.5GHz帯はもう1社、ウィルコムにも割り当てられ、XGP事業のサービスインを目指したが、2010年3月に固まった再建計画でソフトバンク等が出資する新会社にXGP事業は譲渡されることが決まっている。

2.5GHz帯の割り当て後、総務省は2009年6月、今度は1.5GHz帯、1.7GHz帯の割り当てを実施。さらに現在は700/900MHz帯の新規割り当てに向けた検討が行われている。今回はこの1.5/1.7GHz帯割り当てが各携帯電話事業者の次世代インフラ戦略に及ぼした影響を押さえ、次回第3回で700/900MHz帯を中心とする新たな帯域割り当てを巡る動きを整理する。

1.5/1.7GHz帯は携帯4社が揃って獲得

総務省は2008年春、LTEを固定系のNGNに相当する新たな産業基盤と位置付け、その整備を推進していく方針を打ち出した。2009年6月に行われた1.5GHz帯と1.7GHz帯の割り当ては、その具体策となるものだ。

2009年1月に総務省が発表した「指針」(特定基地局の開設に関する指針)では、1.5GHz帯の計35MHz帯域を10MHz幅2ブロックと15MHz幅1ブロックとして割り当てる方針が示され、1.7GHz帯にも10MHz幅1ブロックの割り当て枠が設定された。

最終的には、1.5GHz帯ではソフトバンクモバイルとKDDI(および沖縄セルラー)がそれぞれ10MHz幅、NTTドコモが15MHz幅の帯域を取得。1.7GHz帯の10MHz幅はイー・モバイルが取得している。

図表 1.5/1.7GHz帯の周波数割り当て
1.5GHz帯、1.7GHz帯の周波数割り当て

この1.5GHz/1.7GHz帯の割り当てでは、ソフトバンクやイー・モバイルなどの要望を受け、LTEだけでなく3.5Gの高度化システムであるDC-HSDPAの導入も認められた。1.5GHz/1.7GHz帯の割り当てを受けた携帯キャリアは、基地局開設計画の認定日2009年6月10日から5年以内に、全国の各総合通信局の管轄区域内で、人口カバー率50パーセント以上のエリアをLTEかDC-HSDPAで構築する必要がある。

また、この条件を満たせば、HSPAや64QAM対応のHSPA+などの3G規格でこの帯域を使うことも認められた。

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